イオンリテール株式会社のオリジナルキッチン「RaeLiS(リリス)」が、2015年度グッドデザイン賞(主催 公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞したそうです。
リリスの特徴の一つは、収納をユニット化し、キッチン、ダイニング、リビングへと自由に増やして配置することができる、収納の拡張性。上写真の組み合わせは斬新ですよね。普通は独立した存在であるシステムキッチンとダイニングテーブルとリビングボードが全部繋がっているんですから。デザインとしては確かに、素晴らしいと思いました。
見た目重視の最近のキッチンや収納家具に対する違和感
リリスをそれ単体として見ればとても素晴らしいデザインだと思うのですが、私としては色々と違和感を覚えます。冒頭の写真の状態の場合、ダイニングテーブルの高さから、キャビネット全体はだいたい高さが60cmくらいであることが分かります。しかしこれではソファに座ってテレビを見る場合、明らかに高すぎます。ソファに座ってテレビを見るには高さ40~45cm程度のボードであることが一般的で、これでは目線を上げてテレビを見る必要があります。
キャビネットの中の収納スペースにも疑問を感じます。鍋やボールを収納するのに適した高さとビデオレコーダーやDVDパッケージの高さは同じではありません。引出しの高さを揃えれば美しいですが、これでは非常に使い勝手が悪いと言えます。
そのほか、電子レンジはどこに置くのか?冷蔵庫は?という疑問も湧きます。きっと食器はキッチンとリビングの間に収めるんでしょうけど、キッチンからの距離は遠いし、ダイニングテーブルに阻まれてしまいます。
きっとこの組み合わせはあくまでコンセプトモデルであって、現実的なことは無視して考えられたものだと思います。しかし、こうやって理想と現実のギャップがどんどん広がっていることは紛れもない事実です。収納というか、使い勝手のことまで冷静な判断をすることができれば、最終的には現実的なプランを自分で考えることもできると思います。しかしそこに考えが至らないままに理想だけを追いかけてしまうと、非常に暮らしにくい空間を生み出してしまうのです。
このことは決してリリスに限った話ではありません。いやむしろ、リリスをやり玉に上げるつもりはありません。全部同じ深さの引出しばかりなのはどこのシステムキッチンでも同じ傾向ですし、マンションのモデルルームではあり得ない家具レイアウトとなっていることが多々あります。理想は理想として、消費者側がしっかりと現実を見なければならないのです。
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