少し前に「あご(トビウオ)」のだしがブームになり、一時はどこに行っても手に入らないという状態になりました。ブームにつけ込んで、あごがちょっとしか入っていない粗悪なだしが販売されていることが問題になったりもしましたけど、最近はどうなっているんでしょうか。
それはさておき、日本出版販売が第1回「だし検定」を開催するにあたり、「だしに関する意識調査」を実施しました。インターネット調査により全国の10~60代の男女1274名に対してアンケートをおこなったところ、だしを取った経験がない人は約3割にも上ったということです。
だしの取り方を知らない人は約2割
出典:PR TIMES(以下同)
だしを取った経験以前に、だしの取り方を知らない人は30代以上でも約2割となりました。
今回のプレスリリースでは、30代以下の人では約3割の人がだしの取り方を知らないことを強調していますが、顕著なのはむしろ20代以下です。独身の方も多く含まれているでしょうから、個人的には大きな問題ではないと思います。
だしを取った経験がない人は約3割
次に、冒頭でも述べた通り、だしを取った経験がない人は約3割となりました。こちらでもやはり20代以下が顕著ですが、だし以前に料理をする機会も少ないのではないかと思います。
大多数が「市販のだしパックで十分」
だしを取ったことがないと回答した人(423人)に「だしを取らない理由」について問うたところ、上表の通りとなりました。「市販のだしパックや粉末、顆粒などの関連商品で十分だから 」という理由がもっとも多く、「だしの取り方を知らないから」、「だしを取る時間がないから」がそれに続く結果となりました。
だしの取り方はともかく、私も同感です。
だしを取っても「年に数回」が半数近く
だしを取ったことがあると回答した人(743人)に「だしを取る頻度」を聞いたところ、「年に数回」(29.3%)と「年に1回以下」(15.2%)で半数近く(合計44.5%)を占める結果となりました。
ちなみに私の実家では毎日必ずだしを取っていましたが、今はもう時々しかだしを取っていません。私自身も粉末だしばかり使っています。
味噌汁にだしが必要と知らないのは1割以下
それでも、さすがに味噌汁にだしが必要ということを知らなかったのは全世代で1割以下となりました。今回のプレスリリースでは20代の約1割が味噌汁にだしが必要ということを知らなかったと嘆いているように見えますが、私としては逆に60代の6.5%が知らないということのほうが驚きです。
イマドキ、だしって必要?
日本出版販売が企画運営する「だし検定」は”だしについて学ぶことで、「土台のしっかりとした」健康的な食生活を楽しむきっかけになること”を目指しています。また、だし検定実行委員会の岡田孝哉氏は、日本食の「だし」が海外で注目を浴びている一方で、日本国内では「だし」について意識が希薄になっていると指摘しています。
だしは日本の歴史の一部であり、守るべき食文化だと私も思います。また、和食の基本であるだしを大切にすることは、日本人の食を守ることに繋がるでしょう。
しかしながら、丁寧にだしを取ることが現代でも必要かというと私はそうは思いません。粉末だしなどで済ませたほうが、料理時間を短くし、ガス代も節約できます。添加物の心配をすれば確かにジャコや昆布からだしを取ったほうが良いですが、イマドキ化学調味料たっぷりの粉末だしを使う人も少ないでしょう。
私の母は共働きで父の仕事を手伝いながら、丁寧にだしを取って食事を作り、父が食事を済ませてから自分も食べるという日々を送っていました。昔はそれが当たり前だったかもしれませんが、今は違うと思います。夫婦どちらかが手軽に食事を作り、料理を時短することで生じた時間を家族のコミュニケーションに活かすほうが有意義ではないでしょうか。
私の母は料理学校でプロ並みに日本食の腕を磨いた人ですから、私が手抜き料理ばかりしていることは残念に思っているかもしれません。しかし、仮に私が日本の食文化を守ろうと日々努力したところで、私の子や孫の世代ではいずれその流れは打ち切られてしまうと思います。
だしが大事だと言っても、一般庶民が宮中料理の真似事をし始めたのはたかだかこの1~2世紀の間のことでしょう。私が20年ほど前に東京でかけそばを食べたときは、だしが入ってなくて醤油をお湯で薄めたみたいでしたよ(苦笑)
なんでも一生懸命にやることは良いことですし、決してだしの啓蒙活動を否定するわけではありません。しかし、だしにこだわるとだしの材料がたくさん必要になりますし、おそらくそれ以外の食材にもこだわりが生じて量も増えます。そうすると、食へ費やすエネルギーも時間も収納スペースもその管理も膨大になってくるのではないでしょうか。
個人的には家事はもっと楽をしたほうが良いと思います。
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コメント
出汁は微妙な問題ですね(笑)
ぶっちゃけると、ある種の信仰的なものに近いかもしれません。(手作り・天然・自然が大事なキーワード)
手間で言うと、本格的な出汁の取り方ではなく冷水筒に削りをパックに入れて昆布・いりこと水と一緒に入れて冷蔵庫で一晩おくだけで簡単に1日分の出汁が作れる「水出し」という手法で家庭用なら充分な出汁が作れます。
なので、手間(時間)は、あんまり理由にはならないような気がします。
天然出汁は、鰹節にしても昆布にしてもそれなりにコストがかかるので、食費を押し上げる要素になります。
もちろん出汁をとった後の削りや昆布をきちんと利用できるスキルと技術があるのなら、それも少しは違うでしょうけど……。
昔読んだ漫画で、旦那が奥さんに母親のやっているようにきちんと出汁を取ってみそ汁を作って、美味しくないよと文句を言う。奥さんはちゃんと天然出汁。旦那の母親に聞いたら、出汁の素愛用で、しかも頂き物のアレコレで定まっていないという真相で、奥さん呆れて夫婦げんかという話がありました。
案外、人間の舌って天然出汁も出汁の素も極端に濃くなければ違いはそれほどないと思いますよ(笑)
なので、天然出汁で美味しい・ステキ生活という方も、出汁の素でその分を食材豊かにして美味しい生活という方もそれぞれで。
あんまり拘りすぎないで、もう少し気楽にというのは賛成です。
MAOさま
> ぶっちゃけると、ある種の信仰的なものに近いかもしれません。(手作り・天然・自然が大事なキーワード)
そうなんですよね!まさにそこだと思います。
だしをちゃんと取ることが良いことだということは分かるけど、時間と手間を掛けて手作りするメリットや、健康に及ぼすメリットが明確とは言えないんですよね。
たとえば私が普段お取り寄せしている粉末だしの成分を見てみましたら、いわゆる化学調味料は入っておらず、さば、こんぶ、ほたて、かつお、とりといった各種材料を毎回使うのは無理だし、むしろ粉末だしだと手軽で良いと思いました。
> もちろん出汁をとった後の削りや昆布をきちんと利用できるスキルと技術があるのなら、それも少しは違うでしょうけど……。
私の実家では、だしがらのこんぶやジャコが佃煮になって食卓に上がることがよくありました。
でも私自身、あまり佃煮は食べないし、子供らはもっと食べないので…。
さらに、実家では味噌汁にジャコがそのまま入っていることも多かったです^^;
カルシウムも摂れて良いとは言え、ちょっと口当たりが気になりました…。
以前に読まれたマンガの話というのも面白いですね^^
ラーメンでもだしを極めると限りなくインスタントラーメンの味に近づいてくると言われています。
現代人の舌がマヒしているとも言えますが、やはり普段食べ慣れた味が美味しく感じられるということなのでしょう。
水出しするなど工夫次第で、比較的手軽にだしにこだわることもできますね。
私も手抜きばかりせず、かと言って無理に背伸びせず、気楽にやっていこうと思いました^^