リサーチツールの提供と運用などをおこなうクリエイティブサーベイが、全国賃貸住宅新聞社と共同で、賃貸住宅に住んでいる20~40代の男女600名を対象にインターネットで「賃貸業界新市場に関する意識調査」を実施。その結果、「DIY賃貸」に対するユーザーの反応について、以下のことが分かりました。
- 入居時に自分の好きな内装に改装できる「DIY賃貸」の認知度は38%と低い結果に
- 「DIY賃貸」を『選びたい』と回答した人は52%と半数程度に
- DIY賃貸を選びたいと回答した人のうち74.4% が『場所や家賃などの条件を満たしていればDIY賃貸を選びたい』ことが判明。『条件は多少悪くても構わない』は5.8%に留まった。
- 選ばない理由として多かったのは、『興味がないので、物件候補としては考えない』、『いずれ退去するので、DIYで改装する必要がない』など
引用:PR TIMES
「DIY賃貸」が増えてきたのは自然な流れ
もともと賃貸住宅市場は、借り手が家主に対して「住まわせてくれてありがとう」と言って礼金を渡すほど、貸し手優位でした。しかし、相続税対策などで賃貸住宅物件が過剰にストックされる一方で少子化高齢化が進むと、徐々に貸し手優位の状況は崩れてきました。おまけに、築年数の古い物件は敬遠されるうえに修繕費もかさみます。
そこに降って湧いたのが昨今のDIYブームです。新築のときは入居者に好き勝手いじられたらたまらないと考えていた家主も、入居者を確保するのに苦労することが増えると態度を軟化させ、DIYを認める方向に変わってきているのが現状と言えます。
それ自体は非常に自然な流れですし、ユーザー側に立てば結構なことだと思います。しかし、ユーザーもそれほど馬鹿ではありません。それを如実に語っているのが今回の調査結果だと思います。
「DIY賃貸」で盛り上がってるのは家主だけ?
私が思うに、不動産業界というのは魑魅魍魎の世界です。借地借家法で借り手優位に規定されているとは言え、敷金返還訴訟などのトラブルなども後を絶ちません。「DIYしても良い」と言われたところで、ユーザーとしてはどこまで信用して良いのかと思うのは仕方のないことです。
また、内装をDIYするには、相当な手間と費用が掛かります。引越しをするだけでも大変なのに、いつまで住むかも分からない物件に手を入れるのは容易ではありません。ユーザーとしてはボロイ物件でも安く借りられるなら自分で手を入れてみようと考えるでしょうけど、家主のほうはDIYができることを好条件として高く貸そうと思っていたりします。
そういう事情を無視して「DIY賃貸」で盛り上がっている賃貸不動産業界は、ユーザー本位ではなく自分本位で、非常に違和感を感じます。
実際のところ、「DIY賃貸」という言葉で盛り上がっているのは、ごく一部の都市部だけのように思います。全国的に見れば田舎のほうがエリア的に広いわけで、田舎の多少古い物件であれば、何も言わなくてもオーナーの姿勢は割りと柔軟です。
私自身はDIY好きではありますが、借り物に過ぎない賃貸住宅を相当な費用と手間を掛けてまでDIYしたいとは思いません。それよりも、どこまではやって良い、どこからはダメだという、線引きをしっかりして欲しいと思うことのほうが多いですね。もしくは、どこまでがオーナーの責任で、どこからがユーザーの責任であるかを、明確にしてもらいたいと思うことも多いです。
結局のところ、「DIY賃貸」などといった言葉よりも、家主自身がどこまで借り手のことを大切にしてくれるかのほうが大事なんじゃないかと思います。今回の調査結果は、そういう安直な言葉に踊らされない、ユーザーの冷静な目を感じさせているのではないでしょうか。
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