家具屋は原点回帰すべき!家具販売店にいま必要なのは「職人」だと思う件

古い桐箪笥・イメージ

私は最近、斜陽化著しい家具業界について思いを馳せることがよくあります。

どうしたら消費者が家具を買ってくれるか、ということではありません。既に世の中は「家具を設えるのが当然」という考え方から「必要であれば買えば良い」という考え方に変わっており、業界がちょっと押したり引いたりしたところでこの流れが変わることはあり得ないからです。

では何を考えているかというと、そのような中で家具業界がどうしたら生き残っていけるかです。裏を返すと、このままでは家具業界は生き残っていけないということです。

既に地方では家具屋と言えばニトリしかないという状況になってきています。もちろんニトリがダメだとは言いませんが、他に選択肢がないことは消費者にとって良いことではありません。

「ネットでも買えるじゃないか」と言う人もいるでしょうけど、なかなか20万円以上もするようなダイニングセットやソファーをポンとネットショップで買う人もいません。正直言って私はスペックさえ確認できればある程度判断できるのでネットでも家具を買えますけど、「やはり実物を見ないと」と言う人のほうが圧倒的に多いのが現状です。

アパレル業界と家具業界の違い

最近、『誰がアパレルを殺すのか』(著:杉原 淳一/染原 睦美、日経BP社)という本を読みました。常々アパレル業界と家具業界は似ているところがあると感じていたので、何か参考になるのではないかと思ったからです。

言うまでもなく、アパレル業界は家具業界と同じく斜陽産業です。また、今は少し変わりつつありますが、内輪の論理を消費者に押し付けて今に至るという点でも似ています。ともにローテク産業という点でも同じです。

一方で、違いもたくさんあります。アパレルは基本的に原価が安く、定価で売れれば大儲け、売れない場合はその値幅が値引き原資となります。また、安くしても売れなければ焼却されます。

家具の場合は高額品が定価で売れれば確かに儲かりますが、粗利のかなり大きい部分が配送設置コストに消えていきます。売れ残ったからと言って焼却されることも基本的にありません。

アパレル業界の新しいプレイヤーは、ユニクロのように生産ロスを最小化することで価格を抑えたり、ゾゾタウンのようにリユース事業に乗り出したり、メチャカリのようにレンタルという手法を取ることで消費者の支持を集めています。これらについては家具業界も学ぶべき点が多々あるものの、前述の通りアパレルと家具では根本的に価格構造が異なるので、単純にそれらの手法を移植することはできません。

家具の場合、特に大きいのが輸送コストです。その問題を解決するひとつの方法がIKEAが採用しているフラットパック、つまり組立家具ということですが、組立家具では完成品と同じレベルの耐久性を得ることは基本的に難しいという問題があります。

また、いったん組み立ててしまった家具を分解するのは難しく、仮に分解しても養生しないと配送できません。ここが家具がアパレルのように簡単にリユースやレンタルができないところであり、安易に返品無料などといった販促策が使えないポイントです。

消費者は多少高くても良い家具を長く使いたい?

「家具とライフスタイルに関する意識と実態調査」図6~8(ディノスセシール)出典:ディノス・セシール

業界紙の『家具新聞(10/4号)』では、ディノス・セシールによる「家具とライフスタイルに関する意識と実態調査」の結果を大きく取り上げ、”モノ持たぬ暮らし拡大”と大きく報じました。

7割以上が「家具は多少高くても長く使いたい」と思う一方、半数近くが「できれば家具を所有したくない」と回答した。不動産、自動車など「モノを持たない暮らし」が家具にも拡大している。また、購入した家具に満足していない人も多かった。この結果について、小売り店に聞いたところ、販売員のレベルの低さが「家具離れ」につながっていると指摘する声も上がった。

引用:家具新聞

私としては、「え?今さら気づいたの?」という意味で驚かされたのですが(苦笑)、この指摘は必ずしも妥当とは言えない部分があると考えます。

まず、この調査が”家具レンタルサービスの利用意向者の中から1,000人”を対象に調査したものであり、基本的に”できれば家具を所有したくない”人が多くを占めるのは当然のことであるということです。また、この調査およびプレスリリースの意図が当初は不明でしたが、2日後にディノスが購入検討型家具レンタルサービス 「flect(フレクト)」をスタートすることで明らかになりました。つまり、自社に都合が良い調査結果を出したに過ぎないということです。

一方、「家具は多少高くても長く使いたい」と考えている人が多いことに安心する向きもあるようですが、これはおそらく業界人が考える「多少高くても」とは大きく隔たりがあるように感じます。たとえば整理タンスの場合、業界人の感覚で言えば「5万円よりも20万円」ですが、一般消費者の感覚から言えば「3万円よりは5万円」という感じではなかろうかと思うのです。

販売員のレベルの低さについては確かにその通りだと思いますが、一方で老舗の家具販売店では未だにベテランの販売員も多数います。そして、ベテラン販売員はなぜ良い家具が高いかを説明できる知識は十分持っています。しかしながら、その家具がお客さんにとってどのようなメリットをもたらすかを説明できる人は皆無です。分かりやすく言うと、料理を普段しない人がシステムキッチンをスペックの説明だけで売ろうとしているのと同じような状態と言えるのです。



家具屋は原点回帰して家具の修理をすべき

私の地元は人口10万人ほどの田舎町ですが、それでも私が子供の頃には駅近くに3軒の家具屋がありました。ですが今は高級国産家具を扱う1軒だけになっています。

より正確に言うと、昔は家具屋ではなくタンス屋でした。そしてそのタンス屋の入口には「桐箪笥の洗いします」などというようなことが書かれていました。私が家具メーカーに勤めていた15年くらい前でも、そういう案内を掲げていたタンス屋はまだ全国にあったと思います。

そんなどこの田舎町にでもある零細のタンス屋を次々と潰していったのが現在の家具量販店です(あくまで結果論として)。家具を大量に仕入れ、効率良く販売することで利益を上げていきました。一方で、タンスなどを修理してくれる店は身近な存在ではなくなってしまいました。

家具をできるだけ買いたくないという消費者の意向はこれからますます強くなっていくと思います。つまり、家具はこれからもどんどん売れなくなっていくのです。

いくら良い家具を勧めたところで、修理してくれるところがなければ、それは壊れたらおしまいです。よって、修理してくれるところが必要です。

家具販売店としては、どうもそれをメーカーに押し付けたいところがあるように思います。いま残っている家具販売店の多くは修理をせずに効率良く売ることだけを考えて今があるからで、店には家具の修理ができる人がいないからです。

しかし、先に述べた通り、家具の輸送コストは膨大です。東京から北海道や東海地方などを往復するだけでかなりの輸送コストが掛かってしまいます。修理代金が1万円で済んでも輸送賃で2万円も3万円も掛かってしまうことが考えられるのです。

私事ですが、少し前に車のバッテリーが上がってしまったので、アマゾンでバッテリーを買おうとしたことがありました。しかし、新しいバッテリーが届いても古いバッテリーの処分に困ります。そのため、バッテリーの処分を引き受けてくれるという近所のホームセンターに買いに行きました。

同様のことが家具でも言えると思います。古い家具の引き取りはもちろん、良い家具を買ってそこで修理もしてもらえるなら、そこで買おうという人はきっと少なくないはずです。

現状は、ネットショップで買っても古い家具の引き取りはしてくれますし、粗大ゴミで処分することもできます。それでも、家具の修理をやってくれるというネットショップはないと思います。

昔は、タンス屋で「椅子が壊れたんだけど見てもらえないかな?」と言えば、「おう!じゃあ持ってきてみなよ!」と言ってくれたに違いありません。しかし、そういう風にお互いに気軽にやり取りできる店が今はもうないのです。

これは販売員の知識の問題ではないのですね。販売技術の問題でもありません。むしろ職人としての技術が必要なのです。

以上、話をコンパクトにまとめるためにまとまりのない文章になってしまいましたが、もはや「家具が売れない」と嘆く時期ではなく、時流に合わせた家具販売店の在り方を考える時期ではないでしょうか。

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