昨今、「JOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード)」や「niko and…(ニコアンド)」、「URBAN RESEARCH(アーバンリサーチ)」など、アパレル会社が家具や雑貨の取り扱いを本格化させるという事例が相次いでいます。もともと展示什器などを売って欲しいという声があったからこそだと思いますが、アパレル業界の競争が厳しさを増す中、既存ユーザーに対して洋服以外で売上を見込めるというメリットがあります。
しかし、家具というのは相当に難しい商品です。アパレルも家具も粗利の大きい商品ですが、アパレルは値引きしなければ丸儲けである一方、家具は値引きしなくても配送コストで利益が飛んでいきます。また、基本的に客が持ち帰ってくれるアパレルと異なり、家具は在庫管理や運搬設置のノウハウが必要です。その他、購入頻度や売場回転率など、違うところがたくさんあります。
そんなわけで、私はそのうち尻尾を巻いて撤退していくだろうと思っていました。ところが、そこはさすがインテリア業界より頭が切れるアパレル業界。様々な戦略を描いているようです。
ベイクルーズ×ナック「ジャーナルスタンダードの家」

出典:JSFH
まずはベイクルーズ傘下のACME(アクメ)が運営するジャーナルスタンダードのインテリアショップ「ジャーナル・スタンダード・ファニチャー」から。全国の工務店を対象にハイエンドなデザイン・設計支援サービスをおこなう住宅プロジェクト「HOMA (ホーマ) 」を展開するナックと業務提携して、新築住宅「JSFH(journal standard Furniture HOUSE)」を2019年春から販売すること発表しました。
2014年からアクメはリノベーション設計などをおこなう「リノベる。」と共にジャーナルスタンダードファニチャーの世界観や家具を取り入れたリフォームのショールームを運営してきましたが、ここに来て新築にも手を広げたというかたちです。ジャーナルスタンダードファニチャーとしては新築住宅の開発に関わるのは初めてのことですが、実際の施工は全国約200のホーマ加盟工務店がおこなうので問題はないでしょう。
無印良品の家やイデーの家など、ショップコンセプトが活かされた新築住宅の販売というのは従来からありますので、より個性的なジャーナルスタンダードファニチャーの家が登場したことは何ら違和感のないところだと思います。一方で、だいたいどれくらいの価格になるのかが気になるところですね。
「niko and…」が法人向け展開を本格化

出典:niko and…
家具メーカーも家具量販店だけではなくハウスメーカーやコントラクト向けに営業する動きが活発化していますが、実際のところ、家具メーカーはほとんどが中小企業でマンパワーが少ないためごく一部にとどまっています。その点、アダストリアはニコアンド以外にも20以上のブランドを抱えるだけあってマンパワーがあるのでしょう。B2Bのサイトを公開し、法人向け展開を本格化させています。
ニコアンドはB2Bの展開を2018年1月から既に開始しており、レジデンスやワーキングスペース、大学のラウンジや図書館、カフェなど、人々が過ごす全ての場所を対象に、それぞれの空間の目的や用途に応じた具体的なライフスタイルの提案をおこなっています。B2Bのサイトではその事例も多数紹介されており、機動力の高さがうかがえます。
基本的に、家具業界ではB2Bは売上は作れるものの、儲からないと考えられています。それはニコアンドとて同じことでしょう。しかしながら、いろんなところでニコアンドの家具に触れることでユーザーの接触機会を増やしていきたいと考えているようです。個人的には、耐久性の心配はないのかなと疑問ではありますが。
これらジャーナルスタンダードファニチャーとニコアンドの動きは、アパレル業界の中でも今風な考え方に基づくと感じます。つまり、あくまでトレンド重視、品質よりもデザインに重きを置き、トータルでコーディネートするという感覚ですね。同じアパレル業界でも、オンワードやワールドとはちょっと感覚が違って、「ZARA(ザラ)」などのようにファストファッション的だと思います。
なので、日本の家具業界のほとんどとはスタンスが異なると感じます。日本の家具メーカーはほとんど品質重視ですからね。販売店のニトリですらそうで、IKEAとは根本的に違います。
それでも、IKEAがかなりの売上を従来の家具市場から奪ったのもまた事実。ジャーナルスタンダードファニチャー、ニコアンドともに、ファストファッションではなくあくまでヴィンテージですが、インテリア業界に風穴を開けることになるのでしょうか。
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