一般的にマンションは駅に近くて便利な反面、収納が少ないと言われがちです。そのためデベロッパーもそういうネガティブなイメージを払拭すべく努力しています。もっとも、面積は限られるわけですから、収納スペースを単純に増やすというわけにはいきません。「いかに多く見せるか」がポイントになっているのです。
今回の「収納間取り診断」で紹介する京都市上京区の賃貸3LDKマンションもその努力が感じられる間取りです。
賃貸マンション(3LDK/京都市上京区)
- 家賃=19.5万円、管理費等=2.184万円
- 敷金=無料、礼金=2ヶ月
- 間取り=3LDK、専有面積=83.6平米
- 築年月日=2016年08月、建物構造=RC(鉄筋コンクリート)
物件詳細はコチラ(画像あり)
こちらの間取りは一見すると、収納がかなり多いように見えます。各部屋に一間幅程度のクローゼットがあり、LDKにもクローゼット。キッチン側はカウンター下収納ですね。玄関入って両側の下駄箱も相当大きいです。洗面化粧台の横にも物入があります。
これは決して「収納が多いように見える」のではなく「実際に収納が多い」わけで、100平米に満たないマンションでこれほど多くの収納を備えていることは極めてまれです。一戸建ての家でもこれほどの収納スペースがあることは少ないと言えるでしょう。
それはそれで結構なことなのですが、この間取りには2つの問題点があります。
扉式の幅が広いクローゼットは使いにくい
マンションのクローゼットは折れ戸ではなく観音扉であることが多いです。私がマンションのモデルルームでセミナーをした経験から言うと、郊外よりも都心のほうがその傾向が強いように思います。では、なぜそのような傾向が出るかというと、一般的には以下のようなことが考えられます。
- ハイグロスの扉のほうが一般的な折れ戸より高級感が出る
- マンションは戸数がまとまるので希望の仕様でオーダーしやすい
- 既製品で対応できない特殊なサイズでもオーダーできる
- オーダーでは折れ戸よりも扉のほうが作りやすい
- 折れ戸と違って影になる部分が少なくデッドスペースを生じにくい
こちらの物件に関してはクローゼットの扉はハイグロス(鏡面塗装)ではないので、1番目の理由は当てはまりません。むしろ、既製品では対応できないサイズと仕様を作ることにメリットがあったんだと思います。クローゼットの中まで化粧していますからね。ハイグロスではないものの、高級感を演出したかったんだと思います。
5番目のデッドスペースを生じさせないというメリットは、たぶん考えていないと思います。結果的にそうなるだけで、あくまでコストとの兼ね合いの部分が主な理由と考えられます。
そういうこともあって、こちらの間取りのクローゼットは扉式になっているんだと思いますが、扉式の幅が広いクローゼットは使いにくいです。折れ戸であれば片手で開けられるものの、観音扉だと両手もしくは片手でツーアクションが必要になります。また、スカートを取り出したら今度は隣の扉を開けて上着を取るなどする必要があります。
幅90cmまでの収納スペースであれば観音扉でも大きな問題はありません。しかし、一間幅くらいになると、折れ戸や引き戸のほうが使い勝手は良いです。
あちこちに開けるべき扉があると収納が多いように錯覚しがちですが、使い勝手をよく考えないといけません。
食器棚を置く場所がない
これほどの高級マンションになると、そこに住む人はご飯を作る必要がないのかもしれません。いや、本当に大手のデベロッパーが建てるマンションはそういう価値観じゃないかと思わずにおれないことが多いのです。
こちらの間取りのキッチンは珍しいU字型で、冷蔵庫を置く場所はありますが、食器棚を置く場所はありません。カウンター下に収納スペースがありますけど、普通に考えてここまでグルッと回り込んで料理の盛り付けをするというのはちょっと考えられないですよね。だいたい、この場所にはダイニングセットを置くのが一般的で、洋室③のドアもありますから、カウンター下収納を使わないか、LDKを広いDKとして使うかという2択になってしまいます。
システムキッチンの冷蔵庫側のところを食器棚代わりに使い、天板に電子レンジなどを置くという考え方もできますけど、一般的には収納力が足りないと思います。
このように、こちらの間取りは確かに収納スペースが多いように見えますが、非常に使いにくいと感じます。料理はほとんどしない、洋服や靴は多い、夫婦だけ、もしくは子供ひとりくらいの世帯であれば良いのかもしれませんが、それだったらウォークインクローゼットを設けて2SLDKにすれば良かったのではないでしょうか。
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