残念ながら「ミニマリスト」は「2015ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたもののトップテンには入りませんでした。しかし、それでも多くの人の注目を集めたことはスゴイことだと思います。極限まで「断捨離」して必要最小限のモノで暮らすことに多くの人が憧れ、またその暮らしぶりに興味を持った人が多かったということでしょう。
モノを管理するには膨大なエネルギーが必要
私も今年、ミニマリストに興味を持って、本を2冊読みました。しかし、あまりにも期待が強すぎたためか、その内容にはガッカリしました。いずれもミニマリストになって良かったことが書いてあるというよりも、それまでのマキシマリスト的な暮らしぶりを必要以上に貶めることで相対的にミニマリスト的な暮らしを肯定しているように感じたからです。
【関連記事】
そんなわけでこれらの2冊の本は、ミニマリストの教えに従ってソッコーでブックオフに売りに行こうと思いました。しかし5ヶ月経った今もまだ私の手元にあります。わざわざブックオフに行くのが面倒だったということもありますが、それよりも大事なことが多くて、それらに構ってやる暇がなかったからです。
もし私がミニマリストなら、これらの本のことがすごく気になって、すぐにブックオフを目指していたことでしょう。ですが逆に言うと、一つ一つのモノに細心の注意を払わなければならないミニマリストはなかなか忙しそうです。
モノの量が増えればモノの管理に多くのエネルギーが必要です。しかしモノを必要最小限に抑えようとするにもかなりのエネルギーが必要です。料理をする前には献立をしっかりと計画する必要があります。「今晩、遅くなるから外で食べてくる」と旦那が言えば、余計にイラッとします。友人が思いがけずプレゼントしてくれたモノをその場でお断りする必要もあるかもしれません。
片づかないことは決して悪いことではない
正直に言って、片づかないお宅を見ると、もう少しモノに目を向けてあげて欲しいと思うことがあります。放置されたモノが、まるでペットショップで買ってきて世話をすることなく放置された犬や猫のように思えるからです。
それでも私は、片づかないお宅の住人の人格やライフスタイルを否定的に思ったことは一度もありません。子供が散らかした様子は活気があって微笑ましいですし、モノのことよりも子育てに一生懸命な親御さんは立派だと思います。仕事が忙しくて片づかないお宅には書類や書籍がたくさんあって、プライベートを犠牲にしてまでも仕事に没頭する使命感に心を打たれることすらあります。
しかし当の本人は、片づかないことを否定的にしか捉えていないんですね。ミニマリストは善で、マキシマリストは悪であるかのように思ってしまうのです。でもそれは違います。何事も良いことばかりではないのです。ミニマリストにはミニマリストの良さがあり、マキシマリストにはマキシマリストの良さがあるのです。それは前述の通り、モノの量を維持するにも処分するにも相当のエネルギーが必要だからです。また、モノよりも大切なコトを追求した結果なのです。
だから片づかないことは決して悪いことではありません。病気になって初めて健康のありがたさに気づかされるように、片づかない有様を見てネガティブな面ばかりに目を向けるのではなくポジティブな面にも気づいて欲しいのです。
片づけは結果がすべてではない
もちろん、私は「だから片づけなくたって良いじゃない」と言っているわけではありません。また、ミニマリストを否定しているわけでもありません。
「2015ユーキャン新語・流行語大賞」では「結果にコミットする」というフレーズもノミネートされていましたが、片づけでは結果だけを求めてはいけないと思うのです。ミニマリストもモノと一つ一つ向き合って手放していくというプロセスを経ています。いきなりミニマリストになったわけではありません。
ホリエモンこと堀江貴文氏もミニマリストだそうですが、彼はトライアスロンをしています。トライアスロンは己の身一つで戦う競技ではありません。バイク(自転車)用品はたくさん必要ですし、ウェアも相当揃えていることでしょう。だからホリエモンはミニマリストではない、というわけではなく、ミニマリストと一言で言っても様々であり、やはり己と向き合わなければ身の周りをスッキリさせることはできないということだと思います。
ミニマリストの部屋の様子は目で見て分かりやすいものです。でも私が読んだ本の著者が伝えたかったのは、そうした結果よりもむしろそこに至るプロセスだったのだと思うのですね。作業の推移や、心境の変化など、そこがむしろ大事だということです。
片づける際は、現状をポジティブに捉えつつ、プロセスを楽しみながら、進めたいものです。
コメント