世の中には既にたくさんの収納棚があります。にもかかわらず、イメージした材質、構造、デザイン、カラー、サイズのものを探すと、意外と見つからないということは珍しくありません。予算内に抑えるとなると、なおさら難しいです。
先日も、学習机の横に並べる書棚をお探しの方から、「ブラック系のスチールのフレームで、ナチュラル系のフラットな棚板のものが欲しい」とご相談がありました。ダーク系の棚板や、高価なものならあったのですが、結局は予算重視でイメージとはちょっと違うものに落ち着きました。
しかし、そのときにもしこの商品が発売されていたら、選択肢に入っていたかもしれません。ライクイット(吉川国工業所)の「シェルビングシステム」という新商品です。
※この記事は2025年11月17日時点の情報に基づいています
ライクイット・シェルビングシステム

出典:Like-it
2025年11月10日に発売されたライクイットのシェルビングシステムは、線の細いスチールパイプと天然木突板の棚板を組み合わせたシンプルなシェルフです。
2025グッドデザイン受賞。素人目で見てもそれと分かる機能美が感じられます。

重ねたり横に連結するシステム
ライクイットのシェルビングシステムは上記4つが基本セットです。幅はすべて82cm。高さは89cmと110cmの2サイズ。奥行は40cmと50cmの2サイズとなっています。なお、350と450という品番はそれぞれ棚板の奥行を示しています。
ほかにも支柱や棚板などがオプションパーツとして用意されていますが、基本的にはこれらのセットを積み重ねたり横に連結することができるというシステムです。
付属の六角レンチで組み立て
組み立て、組み替えは、付属の六角レンチを使用します。ドライバーを使わなくて良いので、不慣れな人でもネジの頭をナメてしまう心配がないのは安心です。
一方で、六角レンチは太さが2種類あります。さほどトルクを掛ける必要もないのに、どうしてこんな仕様にしてしまったのかと不思議に思います。
内寸は幅780×高さ375mmが基本

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シェルビングシステムが”システム”である所以は、ライクイットの各種収納ケースのサイズに合うモジュール設計になっている点も挙げられます。1段あたりの内寸は幅780×高さ375mmが基本で、以下の商品などを組み合わせできるようになっています。
ファイルボックスを立てて収納するにも十分なサイズで、見た目だけでなく使い勝手にも優れていると思います。
耐荷重は1段あたり100kg

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線が細いデザインでもヤワではありません。耐荷重は棚板1段あたり100kgを誇ります。ちなみに、棚全体では300kgとなっています。
これほど頑丈なら、ホームユースではどんな場面で使ってもほとんど問題ないでしょう。
ムーベに似てる
ライクイットのシェルビングシステムは1セットあたり税込46,200円から51,700円と高価です。2段重ねれば10万円くらいになってしまいます。
ただ、デザインが似ているデンマークのMOEBE(ムーベ)の「シェルビングシステム」(上写真)だと1セットで127,600円ですから、ライクイットの2倍以上です。それを踏まえると、ライクイットのシェルビングシステムも決して高いとは言えないと思います。
ちなみに、両者は商品名が同じで、デザインも似ていますが、棚板を固定するための構造や連結する方法が異なるため、少なくとも私はパクリだとは思っていません。
天然木突板×ラッカー塗装

以上の通り、とても素晴らしいライクイットのシェルビングシステムですが、私には2つの疑問があります。まず棚板はMDFに天然木突板を貼った合板ということですが、樹種が不明です。
オークのようにも見えます。しかし、それならそうと書くでしょう。私の見立てでは栓(せん)ではないかと思います。タケノコ型の年輪と柾目、それぞれがハッキリとした木目で、部分的にくすんだ色に見えることがその根拠です。
家具の材質で天然木と書く場合は、たいてい不都合なことがある場合です。栓なんて一般的ではないから天然木と表示しただけと見ることもできるものの、そう考えるなら敢えてそんなものを使う必要もなかったと思います。
それよりももっと不信感を募らせてしまうのが、ラッカー塗装で仕上げているということです。ラッカー塗装はウレタン塗装に比べてコストと生産性に優れる一方で、変質しやすい塗装です。プラスチック製品を製造している吉川国工業所なら当然知っていることでしょう。
グッドデザイン賞の審査員も随分と適当なコメントをしていますよね。
粉体塗装スチールや天然木の化粧板など耐久性のある素材は寿命の長さと上品さを保証し、これらの仕上げは摩耗や湿気に強い。
プラスチック製品を上に乗せても問題なく、耐久性が強く、摩耗や湿気の影響を受けず、なおかつコストを下げるなら、強化プリント紙を使ったほうが良いはずです。最近の強化プリント紙なら天然木突板とまったく見分けがつかないほどの上品さを備えています。おまけに、天然木突板よりもサスティナブル。
こんな適当なコメントしかできないなら、グッドデザイン賞も、金さえ出せば獲れるなどと言われるモンドセレクションと同じように価値を落とすことになるんじゃないかと思います。そうでなくとも最近は受賞作が多すぎです。
ちなみに、前述したムーベのシェルビングシステムもラッカー塗装ですが、ムーベは2014年設立の新興デザインスタジオです。日本の家具のように実用性に重きを置いているとも思えません。
というわけで、最後はえらい毒を吐いてしまいましたが、プラスチック製品メーカーの吉川国工業所が棚板の塗装に無頓着だったことはとても残念です。設計などをすべてデザイナー任せにしてしまった結果でしょうか。
もっとも、これまで扱っていなかった新しいジャンルに挑戦した気概は評価できると思います。また、シェルビングシステムはデザイン、機能性ともに、とても良くできています。市販のスチールラックに比べるとちょっと価格が高いと感じるかもしれませんが、それも含めて満足感を高めてくれるのではないでしょうか。
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