私が家具メーカーに就職して間もない頃の話です。いきなり担当店舗を持たされて、週末は応援販売。家具の「か」の字も分からないようなド素人が売場に立つという典型的なOJT(On the Job Traning)からのスタートでした。
そんな中、食器棚の売場に立つと、ひとつ不思議なことがありました。「食器棚ピアノ」と書かれたプライスカードがあちこちにあるのです。木目調のものにも、ホワイト系のものにも、扉式のものにも、引き戸式のものにも、「ピアノ」と書かれています。それぞれメーカーも異なります。
「不思議だなー」と思って見ていたら、パート販売員のおばちゃんが「上台よりも下台のほうが手前に出っ張っているものをピアノって言うんだよ。ほら、ここの部分が鍵盤みたいでしょ?」と教えてくれました。
これが私の「ピアノ」との出会いでした。ピアノ式の食器棚は年配の方が好んで購入されることが多かったです。出っ張りの部分にコーヒーカップを置いて、そこでコーヒーや砂糖を入れるのに便利だからです。
でも若い人にはあまり好まれないんですよね。現在主流となっている、電子レンジなどを置くことができるオープンタイプの食器棚はピアノ式と言うことはできますが、そうでない食器棚は上から下まで同じ奥行のストレート式が好まれます。そのほうがスッキリと見えるからですね。
このことは食器棚に限らず、リビングボードや書棚でも同様です。個人的には、安定感があり、使い勝手も良く、圧迫感も軽減できるピアノ式はキライじゃないんですけど、やっぱり世の中のトレンドには逆らえません。
※この記事は2017年7月16日時点の情報に基づいています
ベルメゾン・圧迫感を抑えた壁面収納テレビ台
世の中のトレンドがそんな感じなので、ベルメゾンDAYSの「圧迫感を抑えた壁面収納テレビ台」を見たときはちょっとうれしくなりましたよ。
薄型の液晶テレビが主流になり、レコーダーも奥行がコンパクトになった今、テレビボードをピアノ式にする意味はあまりありません。けれども、本を収納するなら扉付きでも奥行30cm程度で足りますし、逆にレコーダーを収納しようと思ったらやっぱり奥行は40cm以上はないといけません。
そうすると、やっぱりピアノ式であるメリットはあるのですね。そのほうが収めるモノの大きさに合っていて無駄がないのです。また、下台よりも上台のほうが奥行が短いと、圧迫感を軽減してくれます。
横から見るとスッキリ
ほら、この通り。正面から見るとちょっと野暮ったく見えますけど、横から見るといかに圧迫感を軽減してくれているかが分かりやすいと思います。この壁面収納は高さが180.5cmしかありませんから、なおさら圧迫感が少なくて良いですね。
そのほか、この壁面収納の前板は表面材が強化プリント紙で質感が良く、扉にホコリ除けのオートヒンジが付いているなど、高く評価できるポイントがいくつかあります。
一方でダメ出しポイントも多数
配線がしにくい
一方でダメ出しすべきところも散見されました。まず、背面に配線をするスペースの余裕がないのです。これではコード孔から配線を出せばいきなり壁にぶち当たってしまいます。背板をもう少し手前に出したり、コード孔をもっと大きな切り抜きにする必要があるでしょう。
天板の仕上げが残念
天板の前面に面材を貼り合わせて角に丸みが出したと商品紹介ページに書かれていたのですが、実物を見てちょっとガッカリしました。正面に無垢を貼っているそうなのですが、側面のメラミンが出しゃばりすぎてその良さがまったく分かりません。これは国産にしてはあまりにもお粗末です。
テレビの上の空間が無駄
ベルメゾンDAYSの「圧迫感を抑えた壁面収納テレビ台」は幅120cmと150cmの2サイズが用意されており、幅120cmだと47型、幅150cmだと55型程度のテレビが収まるようになっています。でもその上の棚板の位置は同じで、棚板の高さを変えることはできません。
47型と55型では高さが10cm程度違うにもかかわらず、棚板の高さが同じというのは不可解です。サイズ違いのテレビ台を並べることなどあり得ないのですから、ここはテレビの大きさに合わせて扉収納部の高さを調整して空間を有効に使えるようにすべきだったと言えるでしょう。
というわけで、世の中のトレンドに逆らってでもピアノ式の壁面収納家具の良さを提案したベルメゾンの姿勢は素晴らしいと高く評価できる一方、ベルメゾンに対する期待を裏切るところが目立つ商品でした。
コンセプト自体は悪くないと思うので、問題点が改善されることを期待したいところですね。
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