「リビングにクローゼットがないから片づかない」…そんな風に思っている人はいないでしょうか?確かに、最近の新築の家やマンションにはリビングにもクローゼットが備え付けられていることがあり、便利そうに思えます。しかし、実態としてはまったく逆で、使いにくいものであることが多いのです。
なぜそうなってしまうのか?今回はリビングのクローゼットについてお話ししたいと思います。
「何を収めたいか」を考えることがまず大事
もし今、リビングにクローゼットが備え付けられていない家に住んでいたとして、もしリビングにクローゼットがあったとしたら何を収めたいでしょうか?常備薬や日用品、本、子供のオモチャや通園グッズ、洋服、掃除機。そういったモノを収めたいニーズが高いと思いますが、残念ながらほとんどそのニーズに応えてくれません。
リビングにクローゼットが備え付けられている場合、その構造は主に2通りです。押入れのように中段があるだけか、パイプハンガーとその上に枕棚があるか、この2通りです。
常備薬や日用品、本などの比較的小さなモノを収めるには、どちらかと言うと押入れのような構造のほうが良いでしょう。しかし、押入れにそういったモノを収めることを想像してみてください。奥行は浅く、棚は複数段あったほうが使いやすいと思いませんか?
小さな子供のオモチャを収めるなら押入れのような構造の下段に置けば良いかもしれません。しかしクローゼットの扉は小さな子供では開けにくく、もう少し子供が大きくなると今度は遊ぶオモチャが小さくなりますので押入れのようなスペースは適しません。
通園グッズを収めるのであればハンガーパイプがあったほうが良いでしょう。しかし大人が使うようなクローゼットの構造では、子供にとってはパイプハンガーの位置が高すぎて自分で制服を取ることはできません。
リビングやダイニングについつい放り出してしまっている洋服を片づけるのにはリビングにクローゼットがあったほうが便利かもしれません。しかし、そうすることで洋服をわざわざ2ヶ所以上に分散してしまい、管理が難しくなってしまいます。おまけに果たしてどれだけのクローゼットを用意すれば足りるか未知数な部分もあり、外から帰ってすぐにリビングのクローゼットに洋服を掛けるかどうかという疑問もあります。片づけが苦手と言う人ほど几帳面で、脱いですぐの湿気を帯びた洋服をクローゼットにしまい込むことに抵抗を感じる人が多いからです。
掃除機の収納も難しいと言わざるを得ません。掃除機を収めて残りのスペースをどのように活用するか…これが難しいのです。押入れのような構造では掃除機を収めるには下段の高さが足りないことが多く、パイプハンガーが付いた構造では掃除機を置いた上の空間に洋服を掛ける以外は使い道がありません。
つまるところ、リビングにクローゼットが備え付けられていたとして、すなわち片づけやすくなるということは決してないのです。実際、リビングに備え付けられたクローゼットが使いにくいというご相談は非常に多いです。しかし、何を収めるにしても使いにくいのだから当然のことなのです。
リビングにクローゼットを設けるなら、まず何を置きたいかをよく考え、それらのモノに応じた複雑な構造を考えておかなくてはなりません。ただスペースさえあれば片づくというものではないのです。
全体の家具レイアウトや動線も考えておくべき
当たり前のことですが、クローゼットの前には何も置けません。クローゼットの前に何かを置くとクローゼットの扉が開けられず、中のモノを出し入れできなくなるからです。
だから、クローゼットの前には収納家具は置けません。いや、収納家具をできるだけ置かないようにするためにクローゼットを設けたんだから当たり前じゃないかという話ですが、クローゼットがあるおかげで家具のレイアウトが難しくなってしまうのです。
もしそこにクローゼットがなければ、収納家具だけではなく、ソファやテレビが置けたかもしれません。クローゼットを備え付けることですべての家具のレイアウトを難しくしてしまうのです。
リビングにクローゼットを設けるならば、家具を置く可能性がある場所ではなく、動線上に設けるべきです。つまり、通路となる場所です。動線上にクローゼットがあれば使いやすいだけでなく、家具レイアウトを難しくしてしまうこともなく、無駄なスペースも生じません。ただ余った場所にクローゼットを設ければ良いのではないのです。
「クローゼット神話」はそろそろやめよう
地震対策やインテリア性という点においては、クローゼットは良いと思います。しかし、クローゼットがあれば片づくというのは完全に間違った考え方です。
クローゼットや押入れといった造り付けの収納スペースは、かなり大雑把な収納スペースなので、およそ片づけで困ることの多い細かいモノを収めるのには工夫が必要です。クローゼットさえあれば片づくどころか、わざわざ片づけにくくするようなものなのです。
また、クローゼットが厄介なのは、動かせないことです。動かすためにはリフォーム工事をするしかありません。適切な場所に設ければ便利ですが、ほとんどの住宅では全体の間取りを考えたうえで余ったスペースに設けており、動線から外れたり、家具のレイアウトをわざわざ難しくしてしまっているというのが現状です。
さらに言うと、クローゼットひとつ作るのには半間(約90cm)幅でおよそ10万円から必要になります。その値段を出せばそこそこの収納家具は買えるはずで、ハッキリ言ってコストパフォーマンスは悪いです。前述のようなことを考えればなおさらで、本当にこれはクローゼット神話があればこそまかり通っている現実だと思います。
これから家を建てるか買おうかという人は、クローゼット神話に騙されないようにしてください。クローゼットは下手な構造、奇妙な位置に作ってしまうと、お金をドブに捨てるだけでなく、後々にもストレスを抱え続けることになります。繰り返しになりますが、「何を収めたいのか」、「全体の家具レイアウトや動線」について、よくよく考えておく必要があります。収納スペースを増やすという発想をやっていると、いつまで経っても片づくことはありません。
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