マンションでも一戸建てでも、下図のようにキッチンから洗面脱衣所へ直接行ける間取りをよく見ます。この間取り、私がお伺いするお宅でも少なくありません。確かに便利そうに見えますが大きな欠陥がある間取りと言え、なんでなくならないのか不思議に思うくらいです。
動線は1/3になって洗濯や風呂の用意は便利だが…
キッチンから洗面脱衣所に直接行くことができると、料理をしながら洗濯をしたり、お風呂の用意が便利です。キッチンから洗面脱衣所に直接行くルート(赤矢印)がなければ青矢印のルートを通る必要があり、動線は1/3程度で済むと言うことができます。
ただ、そもそも料理をしながら洗濯をしたりお風呂の用意をする必要がどれだけあるかという疑問を感じます。それよりもこの通路を確保するために収納スペースを大きく減らしてしまっていることが問題です。
便利な通路のおかげで収納スペースは1/2に
前述したとおり、確かにキッチンから洗面脱衣所に直接行くことができれば、動線は1/3程度となって便利です。しかし半面で収納スペースは1/2程度になってしまいます。
この間取りの場合、キッチンから洗面脱衣所への通路を確保すると、食器棚の幅は90~140cm程度となることが一般的です。しかし通路を塞いでしまえば、そこに食器棚などを置くことができ、収納スペースを増やすことができます。
4人家族の場合、食器棚の幅が90cmなら必要な食器はすべて収めることが可能です。120~140cm幅であればキッチン家電も収納可能です。さらに通路分の90cm程度の収納スペースを確保できれば、分別ゴミ箱や食品のストックを置くことが可能となります。逆に言うと、洗面所への通路を確保した状態では十分な収納スペースとは言えないのです。
実際のところ、私がお伺いしたお宅でも通路をふさいでしまって、そこにオープンラックなどを置いて収納スペースを増やすことで解決します。クライアントが洗面脱衣所へ直接行くことができなくなると不便に感じるということは一度もありませんでした。洗面脱衣所へ直接行けるのが当たり前で、そこをふさぐという発想はなかったようです。
このように通路をふさぐことで収納スペースが足りないという問題は解決できるわけですが、そうするとこの通路に設けられた建具は無駄であったということになります。建築コストにして最低でも10万円。本当に無駄だと思います。
マンションでも一戸建てでも家を買う場合、どうしても立地と価格で選んでしまいがちです。一方で、自分が何をどれだけ持っていてどんな風に暮らしたいかという考えは後回しになりがちです。また最新の間取りや設備であれば良いもののはず、工務店や販売会社はプロだから間違いないはずなどと過信してしまいがちです。
しかし現実的に、収納のプロから見てこんなに無駄なものが未だにまかり通っているのです。消費者は一面的な便利さに惑わされることなく、しっかりよく考えて家を購入する必要があると思います。
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