ここのところ立て続けに、Yahoo!のトップページで、太陽光発電を採用した新居を建てた人の体験談を記した某雑誌の配信記事が2本掲載されていました。いずれも太陽光パネルと蓄電池を設置しており、ほとんど節電しなくても電気代0円どころか、売電収入のほうが上回るというケースです。しなしながら、いずれも住宅ローンの支払い増加分はほぼ無視されており、どこぞの提灯記事としか思えないような内容でした。
我が家の屋根にも太陽光パネルを設置していますが、たまたまキャンペーンで当選した3.15kWの小型のものです。また、蓄電池は設置していません。設計時にもっと大きな容量の太陽光パネルや蓄電池を設置することも提案されたものの、実際にどれだけ発電できるのか、また耐久年数にも不安があったため見送りました。
しかし、昨今の電気代高騰を見ていると、もっと大きなパネルを積むべきだったかと思わないわけでもありません。そこで、過去2年間のデータを基に検証してみることにしました。
※この記事は2023年7月13日時点の情報に基づいています
築3年余りの新居のスペックと家族構成
住宅 | 所有形態 | 自己所有 |
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構造 | 木造在来工法 一戸建て | |
ハウスメーカー | アキュラホーム | |
築年月 | 2020年2月 | |
ソーラーパネル | サンテック製 3.15kW ※南向きに設置 |
|
蓄電池 | なし | |
間取り | 5LDKS+2DKS+S | |
床面積 | 213.66平米 | |
住所 | 大阪府河内長野市 | |
契約電力会社 | 関西電力 | |
家族 | 世帯数 | 2世帯 |
居住人数 | 5人 | |
空調 機器 |
エアコン | 9台 |
石油ファンヒーター | 2台 | |
セラミックファンヒーター | 2台 |
新居に引っ越しをして早くも3年と3ヶ月が経ちました。アキュラホームで建てた木造在来工法の2世帯住宅です。水回りは各世帯別の間取りで、床面積は200平米を超えています。
前述の通り、3.15kWの太陽光パネルはキャンペーンで当選したため0円です。普通に購入すると100万円くらい掛かったはずです。なお、パワコンは別途10万円が必要という話でしたが、改めて積算書を確認しても明示されていませんでした。
直近2年間の我が家の電力売買実績
直近2年間の我が家の電力売買実績は上表の通りとなりました。
二世帯住宅のため、電気代(買電)は総じて高いです。特に今年1~3月はゾッとしました。
電気代(買電)は従量制ですが、ここでは買電単価=請求金額÷電力使用量で算出しています。一時は30円/kWhを超えた買電単価も最近は落ち着いて、売電単価の24円を下回ってきています。
売電収入は月平均で3千円強となりました。上表からは窺い知れないことですが、契約前の試算表や入居前月の実績を見ると、フルに売電した場合は月あたり平均で約380kWh×24円=約9,120円の売電収入もしくは買電の負担軽減となるようです。
つまり、3.15kWの太陽光パネル一式が100万円とした場合、約110ヶ月=9年強でようやく元が取れるという計算ですね(住宅ローン金利除く)。ちなみに、我が家の太陽光パネルは自然災害保証が10年、製品瑕疵保証が15年、出力保証が25年ついているので、よほど想定外のことが起こらない限りは損をすることはないと考えられます。
ただし、3.15kWの太陽光パネルで売電できるのは10年まで。11年目からは自家消費するか、残りは発電しても放電するだけです。平均すると月あたり6千円くらいは自家消費できるので決して無駄ではないと言えるかもしれませんが、徐々に出力は落ちていくでしょうし(12年までは90%、13~25年までは80%保証)、パワコンが先に壊れる可能性も十分に考えられます。十数年でパワコンが壊れたら、月々数千円のためにパワコンを買い替えるかどうかは怪しいところです。
結局のところ、我が家はタダで太陽光発電を手に入れたので(と言っても住宅本体の価格に含まれていると考えられる)、最終的に撤去費用を考えれば良いだけですが、もし100万円で買っていたとしたら、損をすることはないけれども得すると言えるところまで使えるかどうかは疑問の余地が少なからずあると考えられます。
なお、太陽光パネルの撤去費用は住宅用で15万円程度と言われています。
もし10kWの太陽光パネルを搭載していたら?
我が家の場合 (2019年度) |
※参考:現在 (2023年度) |
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太陽光パネル容量 | 10.08kW | |
初期投資額 | 300万円 | 255万円※ |
売電可能期間 | 20年間 | |
売電単価 | 15.4円 | 11円 |
月平均の発電力量 | 約1,200kWh |
※2023年度現在の初期投資額=300万円-15%で算出しています
新居の設計時には10kW以上の大きな太陽光パネルも提案されました。10kW以上であれば20年まで売電可能だからです(ただし単価は下がる)。
仮に上表の条件で計算すると、初期投資を回収するのに掛かる期間は約162ヶ月=13年半です。その後の6年半で累計約144万円のプラスとなります。
と言うか、毎月平均で約1200kWh×15.4円=約18,480円の売電収入もしくは買電の節約に繋がるわけですから、我が家の毎月の買電金額の平均とほぼ同額です。まさしく電気代0円状態となります(通年換算で)。
ただし、電気代の負担は減る一方で、金利も含めて住宅ローンの負担は増加します。また、果たして13年半以上も無事に太陽光発電を運用できるか不透明です。停電になったときのことを考えたら安心と言うこともできますが、少なくとも私の地元ではこれまでほとんど停電になったことはありません。よって、自家消費を大幅に超える発電量はリスクのほうが大きいように感じた次第です。太陽光パネルが原因で雨漏りしても補償されないし、廃棄コストも必要になりますからね。
ちなみに、現在(2023年度)は太陽光パネルの価格が下落して10.08kWが255万円で購入できたとした場合、約193ヶ月=16年ちょっとで元が取れる計算です。その後4年弱で累計62万円のプラスとなりますが、住宅ローンの金利や廃棄コストも考慮するとペイするか疑問です。補助金などがないと厳しいかもしれませんね。
もし7kWhの蓄電池を設置していたら?
ともあれ、太陽光パネルのコスパは決して悪くないことは確実と言えるものの、蓄電池は高価ですし10年も20年も使えないでしょうから、元を取るというのはなかなか難しいんじゃないでしょうか。そういうこともあって、当時はアキュラホームの営業マンもほとんど勧めてくることはありませんでした。
しかしながら、今後また電気代が高騰するかもしれないとか、11年目から売電できなくなることを考えると、蓄電池を買ったほうが良かったんじゃないかと考えることもあります。そこで、これもシミュレーションしてみることにしました。
家庭用で一般的な7kWhの蓄電池を仮に100万円で買えたとします。3.15kWの太陽光パネルを設置している我が家の場合、月平均の売電電力量は129kWhですから、充電可能な電力量は1日平均で4.3kWh。これでは電力使用量が少ない割りに発電量が多い夏場はすぐに蓄電池のキャパがいっぱいになってしまいます。
逆に冬場は助かるでしょうけど、1~3月の売電収入は1ヶ月あたり2千円未満です。現在の売電分がすべて蓄電池に充電できると考えても、100万円を稼ぎ出すのに27年も掛かる計算となります(蓄電池100万円÷年間売電収入3.7万円)。しかし、そんなことはあり得ないし、明らかに蓄電池の耐用年数を超えており、とてもペイできるとは思えません。
売電できる間はせっせと売電して、10年ないし20年が経過した時点で家計に余裕があって初めて蓄電池の購入を検討するのでも遅くないと思います。もしくは電気自動車を買うかですね。
というわけで、私が2019年に契約した条件では太陽光パネルは損をしないことは間違いないけど、得するかどうかは設備一式の耐久性次第という感じでした。売電単価が下がっている現在はちょっと採算が合わなくなってきていると思います。
結局、リスクをどう見積もるかですよね。たとえばパワコンは15年の製品瑕疵保証が付いてますが、10年で壊れた場合に製品に瑕疵があったかどうかを判断するのは難しいと思います。15年後までにメーカーが潰れていないという保証すらありません。
一方で、先に投資してしまえばあとは回収するだけ、何か想定外のことが起こらない限りは得した気分になれるというのも事実でしょう。たとえば35年ローンで太陽光発電一式分の毎月の返済が少なければ、月々の売電収入のほうが上回るというケースも少なくないはずです。実際、アキュラホームから提示されたシミュレーションもそうなってました(ただし21年目以降は当然ながらローンだけが残る計算)。
富裕層の場合は現金一括で購入して金利の負担がないですし、経営者なら社宅として建てることで太陽光発電一式を減価償却することもできます。それなら完全に勝ちゲーです。逆に言うと、私のような庶民は捕らぬ狸の皮算用をせずに住宅ローンの総額を抑えて正解だったと改めて思った次第です。
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