一時期、私は全国各地の賃貸住宅の間取りを片っ端からチェックしていた時期がありました。その数は少なく見積もっても2千軒は下らなかったと思います。
いま思うと、なんだか馬鹿なことをやっていたなーと思うわけですが(苦笑)、ひとつ大きな成果がありました。それはハウスメーカーによって間取りに特徴が出るということが分かったことです。そして、私が間取りが良いと感じるのは積水ハウスとアキュラホームでした。
私はこれまでたくさんのお宅にお邪魔してきて、多くのハウスメーカーの家を見てきました。積水ハウスについてはクレームを聞いたことがなく、とにかく良い評判ばかりでした。しかし、アキュラホームは埼玉県発祥なので関西ではまだ実績が少なく、少なくとも私は一度も家にお邪魔したことも近所で建築しているのを見たこともなかったのです。
そこで、ネットで評判を検索してみました。そうしたら、結構ボロクソに書かれていたりするのです(苦笑)むろん、ほかのメーカーでもそういうことは多々あるんですけど、小心者の私はちょっと心配になって、一人でコッソリ、アキュラホームのモデルハウスに偵察に行くことにしました。
※この記事は2019年4月9日時点の情報に基づいています
アキュラホーム@堺泉北住宅博
今回アキュラホームのモデルハウスに入るにあたり、フリーのインテリアコーディネーターを名乗って中を見せてもらえないかとお願いしました。このとき、「お客さんじゃないの?」という対応をするところはダメです。業者相手だと見下して、お客さんだと揉み手をして擦り寄ってくるようなメーカーは、下請け業者をコキ使うから絶対に職人が手抜き工事をします。事実、私の地元の建売業者からはことごとく門前払いを食らいました。
もしアキュラホームがネットでの悪評通りの会社ならここでも門前払いを食らったと思います。しかし、担当した営業マンは少し戸惑いながらも中を案内してくれました。アキュラホームは私の心の中でかなりの有力候補だったので、もし門前払いを食らったらどうしようかと前日から不安に思っていたんですけど、幸い第一関門をクリアした格好です。
アキュラはハウスメーカーと言うより工務店
私がアキュラホームに魅力を感じていたのは間取りだけではありません。賃貸戸建てを販売しているので、価格を抑えるノウハウがあると思ったのです。
事実、アキュラホームはローコスト住宅メーカーと言われています。どうやってローコストを実現しているかというと、まず中間マージンを省いているということが挙げられます。
通常、大手ハウスメーカーというのは柱などのパーツを工場で作ったり、大手住宅設備メーカーからシステムキッチンなどを仕入れてきて、それを指定工務店に現場で組み立てさせます。一方、アキュラホームはというと、自ら住宅のパーツを仕入れてきて自社および外部の職人を使って家を建てるのです。つまり、アキュラホームはハウスメーカーと言うより超デカい工務店なのです。
一般的に大手ハウスメーカーで家を建てるよりも地元の工務店で家を建てたほうが安いと言われますが、それと同じ理屈です。また、中間マージンを省いて価格を安くできるだけでなく、自社で施工監理するから現場に目が行き届くというメリットもあります。
大量一括仕入れだから安い
中間マージンを省くだけではありません。アキュラホームは自ら「ジャーブネット」という共同仕入れ団体を主宰して他の工務店と一緒に大量一括仕入れをすることで、システムキッチンなどをかなり安く仕入れています。関東地方のスーパーフジ、近畿地方のライフやオークワ、中国地方のイズミがニチリウグループを通じてPB商品「くらしモア」を共同で展開しているのと同じような感じですね。つまり、ジャーブネットは住宅業界のボランタリーチェーンなのです。
上記グラフの通り、ジャーブネットの供給実績は他のボランタリーやフランチャイズを圧倒しています。そのため、他の団体や大手ハウスメーカーと比較してもバイイングパワーが大きい(=安く仕入れられる)と考えられます。
ただし、安く仕入れられるのは基本的に標準仕様のパーツに限られるようです。そのため、あれこれこだわり始めると、よそで建てるのと価格があまり変わらなくなってしまう可能性があります。しかしながら、標準仕様のシステムキッチンでも、賃貸アパートに住んでいる私や築50年の家に住んでいる母にとっては、まったく問題ないと思います。
フルハイドアなのに安い!
じゃあ、ジャーブネットに加盟している工務店で建てればどこでも安く家を建てられるのでしょうか。私はそうではないと思います。
なぜかと言うと、アキュラホームは1円でも安く家を建てられるようにあらゆる工夫をしているからです。その一例が上写真のような「ハイドア」。上写真は上部がフラップ式になっていますが、基本的に天井いっぱいまでの高さがあるドアのことです。
こういったハイドアでは神谷コーポレーションの「フルハイトドア」が有名です。天井一杯まで高さがあると見た目がすごくオシャレです。しかし、価格がめちゃ高い(苦笑)普通の室内ドアの軽く2~3倍はします。
ところが、アキュラホームではハイドアが標準装備!しかも普通の室内ドアよりも2千円ほど安くできる言うのです。
なぜそんなことができるのかと言うと、ドアの上に垂れ壁を作る手間と材料費を考えると、ハイドアにしたほうが手間がないから。その分、熟練した職人を使わないとドアの開閉がスムーズでなくなってしまう可能性があるので、とにかく良い大工を使うことを心掛けているそうです。また、オリジナルのハイドアを開発することで安く仕入れているということです。
豆腐のように四角い家を建てれば安い
アキュラホームにはコストを抑えるためのノウハウがたくさんあるのですが、キリがないので最後にひとつだけご紹介したいと思います。
私は実家(RC造の陸屋根)で雨漏り対策に苦労する両親の姿を見て育ったので、基本的に陸屋根や複雑な構造の屋根には否定的です。屋根はできるだけシンプルなほうが良い。もっと言えば、家全体が豆腐のように箱状であれば、壁のどこかしらから雨漏りがする心配も減らすことができます。
アキュラホームも同様に考えているようです。もちろん複雑な屋根の形状もできるそうですが、四角い家のほうが施工性が良く、コストを抑えられると考えているということです。
ほかにも、担当してくれた営業マンと、床のフローリングや壁のクロスのことなどもいっぱいお話ししました。家作りに対する考え方が私とまったく同じで、意気投合してしまって、2時間以上もしゃべり込んでしまいました(笑)
アキュラホーム、マジでサイコーです!私はたぶん、アキュラホームで家を建てると思います。一度も見たことがなく片思いの状態だったのが一転、即ゴールインしてしまった感じで、危うくその場で契約してしまうところでした(苦笑)
とは言え、せっかくの一生に一度の大きな買い物です。ここは焦らず、じっくりと他社のモデルハウスもあちこち見てみて、得心したうえでアキュラホームを選べたらと思います。
コメント
展示場で素晴らしい体験をされたようでなによりです。
当方は、アキュラホームの関東のとある支店から大工工事を請け負っている者で、偶然記事をお見かけしました。
ジャーブネットやハイドアなどのコンセプトはおっしゃる通りで、大きなコストカットにも繋がっています。
しかしながら、数年ほど前から、アキュラホームでもベトナム人を技能実習生または研修生として受け入れています。
そしてそのベトナム人を同グループ傘下の別企業へと所属させたうえ、3~4人ほどのチームを組ませ、土台敷き~上棟~野地(屋根下地)施工を行わせ、その分大工の請け負い手間から1~2割ほど差し引くというものです。
この制度が確立されたのは、昨今の人手不足もありますが、労働賃金の安いベトナム人を大量に雇い入れて人件費を抑え、その利益を傘下企業の利益としてアキュラホームに還元させるためでもあり、私ども職人の立場からすれば、実質的な手間下げに他なりません。
なぜなら、一連の施工は総請けの1割にも満たない作業内容だからです。
くわえて、2月と8月の決算に向けて、直近2、3棟(2月決算のときは前年12月、1月、2月)はとてもタイトな工期を強いられ、完成に間に合わせるように、例えば、いつもはアキュラホームを請けていない大工を応援に入れたり、石膏ボード施工専門の業者(大工ではない職人)を入れたりして、その分の手間賃は大工から差し引かれることとなります。
そして、当然ですが、工期を無理に短くしたり相応しくない職人を現場に入れれば、不良施工や手抜き工事も増えますし、手間を下げれば、腕のいい大工は残りません。
長くなりましたが、家は、おそらく一生に一度の大きな買い物です。
そして、その陰で起きているこれらのことも事実です。
しっかり考え、悔いのないように選んでいただけたら幸いです。
大工さま
はじめまして^^
貴重なご意見ありがとうございます。
私も先日ちょっと調べ物をしていて、アキュラホームは自社施工と聞いていたのに一部はそうではないという事実を知ってちょっと戸惑いました。
ベトナム人だからちゃんと施工できないとは一概には言えないでしょうけど、逆にアキュラホームだから絶対に安心とは言い切れないことが理解できました。
一連の事実は、家は一生に大きな買い物だからこそ納得できる仕事をしたいという大工さんにとって由々しき問題だと思います。
同時に、私にとっても同様です。
疑問に感じたことはシッカリと問い質しつつ、良い家を建てたいと思います。
大工さんも色々とご苦労が多いかと思いますが、引き続き良い家を建ててください。
現場の貴重なご意見を頂戴しまして本当にありがとうございました!^^