「町の本屋がなくなってきている」という声はよく聞かれます。商店街の本屋だけでなく、主要駅の大型書店でさえも撤退を余儀なくされるのですから、さぞ出版業界は大変なことでしょう。
amazonの台頭、若者が本を読まない、電子書籍の普及など、町の本屋がなくなる原因はいろいろ考えられます。私は電子書籍派なので町の本屋がなくなることはまったく問題ないのですが、やはり紙の書籍を愛する人にとっては死活問題だと思います。
経産省の商業統計を見ると、本屋(書籍・雑誌小売業)の店舗数はこの20年間で1/3以下になっていることが分かります。1994年に約2.6万店あった本屋が2014年には約0.8万店に、実に約69%も減少しているのです。
これだけ本屋が減っていれば、「町の本屋がなくなってきている」とメディアなどでも騒がれるのは当然のことでしょう。しかし、本屋と同様、もしくはそれ以上に苦しい業界があります。それが家具屋です。
※この記事は2017年12月22日時点の情報に基づいています
家具屋も20年で1/3以下に
同じく経産省の商業統計によると、家具屋(家具小売業)の店舗数は1994年から2014年の20年間で約1.7万店から約0.6万店に約67%も減少しています。つまり、本屋だけでなく家具屋も1/3以下になっているわけです。
言われてみれば町のタンス屋がなくなった、家具を買うところと言えばニトリしかない、という声もあるでしょう。しかし、同じく1/3以下になった本屋は話題に上がっても家具屋が話題にならないのはなぜでしょうか?
それだけ本が愛されているとも言えますが、紙媒体を主体とするメディアの偏向報道ではないかと思ってしまうのは単なる私のひがみでしょうか(苦笑)
家具屋の売上は6割減
家具屋の売上はと言うと、同じく20年間で22,054億円から8,743億円に約60%減少しています。つまり、半分以下になったということです。
店舗数の減少に比べると少しマシですが、これは後述する通り小型店が減少する一方で大型店のシェアが増えているためと考えられます。
家具屋は大型店が勝ち残る
家具屋の1店舗当たり平均売場面積は、この20年間で374平米から769平米に2倍以上に増えています。これは大型店が勝ち残る一方で町のタンス屋が淘汰されたためと考えられます。
大型店の増加で平均売上はアップ
町のタンス屋が淘汰され、大型家具販売店のシェアが増えたことにより、家具屋1店舗あたりの平均売上はこの20年間で約21%増えています。ただ、平均売場面積が2倍以上になったことを考えると、売上が2割しか増えていないというのは心許ないですね。
家具屋の従業員数も半分以下に
家具屋の大幅減少とともに家具屋の従業員数も、この20年間で半分以下になっています。家具屋の店舗数が約60%も減少しているのだから当然と言えるかもしれませんが、平均売場面積が2倍以上になっていることを考えると、売場面積あたりの従業員数もこの20年間で半減していると考えられます。
確かに、売場を見渡しても販売員の姿が見えないことが多いですね。お客さんも少ないですが(苦笑)
従業員の平均売上は2割近く減少
販売員1人が見る売場面積がおそらく2倍以上になっている一方で、家具屋の従業員1人あたりの売上は約17%減少しています。
昔は販売員は社員のほうが圧倒的に多かったですが、今はパートタイマーのほうが圧倒的に多いと思います。パートタイマーだと商品知識が少ないと感じられることも多いかと思いますが、この売上では致し方なしかなと感じますね。
このように斜陽化著しい家具屋の現状ですが、小売業界では多くが同じような局面に陥っているので、時代の流れだと割り切ってしまうこともできると思います。また、現状ではまだまだ僅かながらネット販売もこれから進むでしょうし、家具も扱う雑貨店や同じくアパレル店など、従来の業態とは異なるかたちで家具が販売されるケースも増えています。
ネットショップや異業種からの参入もあって、従来型の家具屋はこれからもどんどん厳しくなっていくでしょう。ですが、時代の流れを作るのは消費者です。これからも家具業界を生温かい目で見守っていただければと思います。
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