1979年に発売されて以来、IKEA(イケア)の定番本棚としての地位を確立している「BILLY(ビリー)」。なんと、全世界で5秒に1台のペースで売れているそうです。
5秒間に1台ということは、1分間で12台、1時間で720台、24時間で17,280台、1年間で630万7200台です。630万台って言ったら、自動車で言うと世界で第6位のフォードモーター(598万台)を上回る規模ですよ。単価が全然違いますけど、実にスゴイことだと思います。
しかしながら、定番でよく売れているからと言って良いものとは限りません。実際、私がこれまでお邪魔したお宅ではほとんどと言って良いほど、ビリーの棚板が落ちてしまっていました。
なぜそんなことになってしまうのか。今回はそこのところを解説してみたいと思います。
棚板1枚あたりの耐荷重に要注意
ビリーの棚板が落ちてしまう原因としてもっとも考えられるのは、棚板1枚あたりの耐荷重をオーバーしてしまっているということです。
本棚って、棚板の幅だけズラっと本を並べてしまいがちじゃないですか。そんなこと、一般の方にとっては当たり前の話だと思われるかもしれません。しかし、どんな本棚でも棚板1段あたりの耐荷重というものが定められています。
ビリーの場合、もっともメジャーな幅80×奥行28×高さ202cmのサイズで、棚板1枚あたりの最大荷重は30kg。と言ってもピンと来ないかもしれません。
雑誌『MONOQLO(モノクロ)』数冊を実際に測ってみたところ、重量は平均して441g、厚みは同じく7.5mmとなりました。幅80cmのビリーの棚板の幅は76cmなので、モノクロが101冊並ぶ計算になります。
モノクロ101冊分の重量は44.5kg。すると、ビリーの棚板耐荷重の約1.5倍となってしまい、完全に耐荷重オーバーです。棚板に目いっぱい本を並べて棚板が落ちてしまった場合は、まず耐荷重を確認し、本を並べる量を減らすようにしましょう。
側板が外側に広がり、棚板はたわむ
しかしながら実際のところ、ビリーは目いっぱい本を並べなくても棚板が落ちてしまいます。耐荷重30kgというのは大ウソで、実際は15kg前後ではないかと考えられます。もしくは、1段あたり最大30kgということ自体は事実でも、本棚全体では100kg程度しか収納できないということではないかと思います(100kg÷6段=1段あたり平均耐荷重16.6kg)。
どうしてそういう計算が成り立つのかというと、棚板の重量はすべて側板に掛かるからです。重みに耐え切れなくなった側板は外側に広がってしまい、棚板と側板の間にすき間が生じやすくなります。同時に、棚板自体もU字型に垂れて幅が短くなるので、最終的に棚ダボから落ちることになるのです。
ビリーは巨大すぎるカラーボックス
そもそもビリーは構造が拙いのです。標準的なサイズのビリーは幅80×奥行28×高さ202cmと巨大ですが、2段カラーボックスとほとんど変わらない構造と言えます。台輪(最下段の幕板)はあるものの、天板は両側板に挟まれる構造のため、側板が外側に広がるのを収めるのに十分な構造とは言えません。
そのようなショボイ構造にもかかわらず、高さは202cmもあり、全部で6段も収納できてしまうので、余計に側板に負荷が掛かりやすいのです。
大洋「エースラック」と比較
日本の家具メーカーが本棚を作ると、天板は両側板で挟むのではなく、両側板の上に乗せるのが一般的です。また、真ん中に帆立板を入れない場合は幅は75cmまでにするというのがほとんど常識になっています。棚板の厚みを30mm程度にでもしない限り、どうしても棚板がたわみやすくなってしまうからです。
また、全高が200cmを超えるような場合は固定棚を2枚に増やすなどします。大洋の組立式本棚「エースラック」(上写真)の場合は棚板全段が移動可能な固定棚となっているので、すべての棚板によって両側板が外側に広がらないようにしています。
以上の通り、ビリーの棚板が落ちてしまう場合は、まず収めている本の重量オーバーを疑ってください。そんなに乗せていないという場合は、これに懲りて、次は日本のメーカーの本棚を買うようにしましょう。
もちろん、日本の家具メーカーもピンキリです。国産だからと言ってすべてがマトモとはとてもじゃないですが言えません。F☆☆合板の不健康な家具を売りまくって倒産したメーカーもあります。
それでも価格を抑えようと思ったら、幅は60cm程度、高さは180cm程度のものを選ぶのが理に適っています。幅80×高さ202cmのビリーはサイズ的に無理があると言わざるを得ません。
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