ブログの過去記事をチェックしていると、普段セミナーで話しているとても重要なことをこれまで書いていなかったことに気付かされることがあります。今回はまさにそれです。
「収納家具を置く場所がない」、「レイアウトに困っている」というご相談をいただくことは多いのですが、私は基本的に今ある状態にプラスするよりも、一旦リセットすることをオススメしています。
もちろん、徹底的に捨てましょうと言うわけではありません。仮にモノを捨てても時間が経てばまた増えるのが自然ですから、「これくらいの物量は必要になりますよね」という前提で考えます。
一方で、間違った考え方は捨ててもらいます。典型的なのは「背の高い家具を置くと圧迫感が出る」という考えです。確かにそのセオリーが通用する場面はありますが、そんなのはたくさんあるインテリアのセオリーのひとつに過ぎないのです。
圧迫感を避けるためには低い家具ばかり置くことが逆効果になることもあります。今回はその理由と、部屋を広く見せたり家具を置く場所を捻出する方法を説明したいと思います。
部屋を広く見せたり家具を置く場所を捻出する方法
6畳間に腰高の収納家具6本を配置した状態(平面図)
結論が気になるところだと思いますが、順番に説明していきたいと思います。
上図は6畳間に腰高の収納家具(W900×D380×H900mm)を6本配置した状態です。ほかにもレイアウトする方法はありますが、このように二列に配置するのが割りと自然だと思います。
6畳間に腰高の収納家具6本を配置した状態(パース)
上図は先ほどの平面図をパース(立体図)に起こしたものです。この間取りでは窓の下は見切れているのではなく、腰高の窓とお考え下さい。
このように腰高の収納家具を向き合う2列で配置すると、確かに圧迫感は少ないように感じるものの、部屋は廊下のような印象になります。
背の高い収納家具で3本に減らした状態(平面図)
そこで、幅と奥行は同じで高さを2倍(1800mm)の収納家具に置き換えます。先ほどと同じ収納量を確保するには、単純計算で3本必要だということがお分かりいただけるかと思います(腰高×2本=背2倍の高さ×1本)。腰高の収納家具を2段重ねにした感じですね。
先ほどの平面図と比較してみるとどうでしょうか。平面図だから当然かもしれませんが、床が見えている面積が増え、部屋が広く感じられると思います。
背の高い収納家具で3本に減らした状態(パース)
そして、こちらが背の高い家具を3本レイアウトした状態のパースです。ドアを開けた正面に背の高い収納家具の側面が見えるので、一瞬、圧迫感があると思いますが、床が広く見えており、しかも窓も見切れている部分がまったくなくて、奥行を感じられる状態になっていると思います。
このように、圧迫感というのは何も収納家具の高さだけが問題ではないのです。背の高い家具にフォーカスしてしまうと圧迫感があるかもしれませんが、床が見えている面積が広いほうが部屋が広く見えるのです。と言うか、実際に広く使えます。
しかも、こうして背の高い家具を採り入れることで、ベッドや机など他の家具を置く場所を確保することができるようになります。「背の高い家具を置くと圧迫感が出る」という呪縛から離れないと、このような解決策は生まれてきません。
壁紙と同系色の収納家具にした場合(パース)
ついでに言うと、背の高い家具を壁紙と同系色(多くの場合はホワイト系)にしてやることで、圧迫感を和らげることができます。これは収納家具が壁と同化して見えるためです。ツヤ有りよりもツヤ無しのほうがさらに存在感を薄くすることができます。
なお、無印良品の「パイン材ユニットシェルフ」やドウシシャの「ルミナスラック」のように側板がないオープンラックを選ぶのも良いでしょう。奥行感が生じやすく、圧迫感を抑えることが可能です。
身を切る思いで断捨離に励まなくとも、物量はそのままで、収納家具を腰高から背の高いものに買い替えて配置し直すだけで、部屋を広く見せたり、ほかの家具を置く場所を捻出することができることをご理解いただけたでしょうか。
繰り返し申し上げますが、圧迫感を感じさせるのは高さだけではありません。奥行も色もツヤさえも影響します。逆に、背の低いものであっても床を埋め尽くすようにモノが散乱していれば、部屋が狭く感じられたり、圧迫感を感じるものです。
ちなみに、背の高い家具を置かないのは圧迫感が気になるからではなく、地震を心配してのことだとおっしゃる方もいます。確かにそれも心配の種ではありますが、低い家具なら安全ということでもありません。事実、IKEA(イケア)のミドルチェストが倒れてきて子供が亡くなるという事件も起こっています。
家具の転倒防止策には様々な方法があります。仮に倒れてきたとしても大事には至らない配置方法というのもあります。部屋を広く見せたい、家具を置く場所を捻出したい、日々快適に暮らしたいということでしたら、ぜひ先入観を捨てて、ひとつでも収納家具を背の高いものに買い替えることをご検討いただければと思います。
コメント
いつもためになる情報ありがとうございます。個人的には商売道具をこんなに気前よくバラ撒いてしまって大丈夫なのかちょっと心配なほどです。
この間取りで取れるパターン、他にもいくつかあると思うんですが、2つ教えてくださいませんでしょうか。
・向かって左の壁に高い収納を並べるのは割と選びがちだと思います。ちょうど幅に収まりますし、窓も見切れません。それをしなかった理由を教えてください。奥行き感を出せないからですか?
・高さの違う収納を組み合わせる方法もあると思います。この場合一番部屋を広く使えるパターンって何でしょう?
個人的に間取り図で言うと左下と右上の角に、扉から遠い順に高い→低いと置く、というのを考えてみました。
収納場所が分散してしまうのはやはり使い勝手が悪いでしょうか…?
通りすが(ってない)さま
おひさしぶりです^^
> 向かって左の壁に高い収納を並べるのは割と選びがちだと思います。ちょうど幅に収まりますし、
細かい設定を説明するとキリがないので省いたのですが、あくまで一般的な畳モジュールの間取りの場合、短辺は90×3-15=255cmくらいになり、90cm幅の収納家具は3台(計270cm)並べることができません。
前提として収納家具を80cm幅とすることも考えたのですが、そうするとレイアウトの選択肢が増えすぎて話がややこしくなるため省略させていただいた次第です。
説明不足で申し訳ありません。
> 高さの違う収納を組み合わせる方法もあると思います。この場合一番部屋を広く使えるパターンって何でしょう?
> 個人的に間取り図で言うと左下と右上の角に、扉から遠い順に高い→低いと置く、というのを考えてみました。
高さの違う収納家具を組み合わせるという方法は大いにアリだと思います。
一番部屋を広く使えるパターンについては理屈上、すべて背の高い家具とする場合だと思うので、組み合わせる場合のパターンはかなり多く考えられます。
おっしゃる通り、間取り図の左下と右上の角に、扉から遠い順に高い→低いと置く、という方法は良い方法のひとつだと思います。
あと、どこから見た状態をメインに考えるかというのも重要なポイントのひとつだと思います。
これも記事では割愛したのですが、今回は部屋に入ったときの景色だけを比較しました。
しかし、来客のあるような部屋でない場合(個室など)は、ご自分や家族が見ている向きを旨として考えるのが良いと思います。
インテリアコーディネートに際してはいろいろな考えがあると思いますので、あくまでご参考程度に考えていただければ幸いです^^
丁寧なお返事ありがとうございます。
すみません、説明を簡潔にするところに突っかかってしまったのですね、申し訳無さでいっぱいです。
インテリアを少しかじってみると、配置でぜんぜん感じ方が変わるのが新鮮です。他の記事も参考にさせていただきながら、最適解を探っていきたいと思います。重ねてありがとうございます。
しかしこういうときに3Dマイホームデザイナー、すごく便利ですね。
通りすが(ってない)さま
いえいえ、こちらこそ説明不足というか、勝手に割愛しまくっていて十分に伝わっておらず、申し訳ございません!
3Dマイホームデザイナーの通常版は家具などの選択肢が少ないという不満はあるものの、簡単にパースが作れるので本当に助かってます^^
ついつい時間を忘れて遊んでしまいますね^^;