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IKEAのMALMチェストが北米で死亡事故&中国でもリコールへ!日本ではどうなの?

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IKEA(イケア)が北米で販売したMALM(マルム)チェストの下敷きになって、これまでに6人の子供が死亡した事実が世間をざわつかせています。

問題の家具に絡む最初の死亡事故発生は1989年。バージニア州在住の1歳8カ月の女児が倒れてきたチェストで身動きが取れなくなり死亡した。イケアの発表資料によると、同社は購入日に応じて全額および一部返金を実施する方針で、固定器具も無料で提供する。CPSCによると、事故の報告は合わせて82件に上っている。

引用:Bloomberg

また、6月にイケアが北米でのリコールを発表後、改めて7月に中国は対象外としたことで中国国内で不満が爆発。その結果、中国でもリコールがおこなわれることになりました(参照:ロイター)。

「じゃあ日本ではどうなるんだ?」という話ですが、”イケア・ジャパンの広報担当者によると、対象商品の一部は日本でも販売しているが、「日本でのたんすとしての基準を満たしており、事故の報告も受けておらず、日本でリコールを実施する予定はない」”そうです(参照:産経ニュース)。

※この記事は2016年7月14日時点の情報に基づいています

 

日本では「富士山52個分」しか売れてないMALMチェスト


前述のロイターの記事によると北米でリコールの対象となったMALMチェストは、1999年から2016年に製造された約3600万個。中国では2014年に開業して以来の166万個が対象と見られます。

一方の日本ではMALMチェストが「富士山52個分」売れたそうですから20万個程度と見られます。

イケア・ジャパンが”事故の報告も受けておらず”と強弁しているように受け取られかねませんが、日本ではIKEAのオープンから10年も経つのに、後からオープンした中国のほうがたった2年で8倍以上も販売しているのです。たいへん不謹慎な計算ですが、北米で3600万個販売して6人が亡くなったことから、中国で166万個販売して0.3人、日本では0.03人という確率と言うことができます。もちろんあくまで確率のうえでの話に過ぎませんが、販売数量という分母がまったく違うということですね。

注意!タンスは引出しを全部引き出せば倒れるもの

基本的に私は、IKEAの家具は安全性を無視しているところが多いと常々感じています。ただ今回のケースに関して言えば、ちょっと有名税的なところがあるのではないかと思ってます。

ネットでの反応を見ると、北米では子供が下敷きになって死亡していることから、子供がタンスによじ登って転倒したと思われていることが多いようですが、これはたぶん違います。タンスというのは、特にこういう安物の場合は、引出しを全部引き出すと手前に倒れるものなのです。また、タンスと言うといわゆる整理タンスをイメージされる方が多いと思いますけど、壁などに固定されていなければ引出式の食器棚やカウンターも同様です。引出しを引き出せば重心が手前に寄って倒れてしまうのです。

 

MALMチェストが特にマズかった点

とは言え、IKEAには落ち度がなかったと擁護するつもりはありません。これはこれでマズい点がいくつかあったのです。

IKEAは最初の死亡事故から随分と長期間に渡ってこの問題を放置してきました。もちろん十分な調査はおこなっていると思いますが、基本的には取扱説明書に記載してある通りに壁に固定すれば問題ないと考えていたのでしょう。これがそもそもの間違いだと私は思います。

MALMチェストの引出しにはいわゆるシングルスライドレールが付けられており、非常に軽い力で引き出せるようになっています。それは使用者にとって便利ではありますけど、IKEAのような典型的なヨーロッパの組立式家具の場合はフラッシュ合板を使わずベタ芯の板材を使うので引出しそのものが重く、引出しの開閉に勢いがありすぎるのです。最上段の引出しを開けてちょっとチェスト全体のバランスが崩れると、残りの引出しもあっという間に飛び出したであろうことは想像に難くありません。

そもそも、背丈ほどもあるような背の高いチェストであれば壁に固定することを考える消費者も多いとは思います。しかし、腰くらいの高さのチェストを壁に固定する必要があると考える消費者は少ないのではないでしょうか。私などは家具のプロで、引出しをすべて引き出せば倒れると分かっていても、腰高のチェストを壁に固定しなければならないとは考えたことがありません。IKEAは壁に家具を固定しなくてもチェストが倒れにくくなるように対策を練っておくべきだったと私は考えます。

 

日本のメーカーのタンスも万全とは言えないが…

前述の通り、タンスというものは基本的に引出しを全部引き出せば手前に倒れるものです。これ自体は構造上、どうしても避けられないことです。しかし、メーカーも無策ではありません。日本の家具メーカーなら、すべてとは言いませんが、何かしらの安全策を講じていることが多いです。

すべてに共通することではないのであくまで一例ですが、たとえばシングルスライドレールではなくフルスライドレールを使います。シングルスライドレールは勢いよく飛び出すことがありますが、フルスライドレールはそれほど勢いよく飛び出すことがありません。

また、日本のタンスの場合は、フラッシュ合板という中空構造の板材を使うのが一般的ですし、引出し内部材には桐を使うことが多いです。もちろん桐を使う場合はIKEAのような低価格にはなりませんが、引出しを軽くすることで手前に倒れるリスクは減るというわけです。

タンス全体の奥行に対して引出しの奥行を浅めに作ることも多いです。引出しの奥行を浅めにすれば、重心が手前に寄って倒れるリスクを減らすことができます。

ただ、こういったことは日本のメーカーが作るすべてのタンスについて言えることではありません。MALMチェスト同等の価格のものであればやはり仕様としては大差がなく、同様の事故が起こる可能性は十分に考えられます

 

我が家でも、高さ45cmのローチェストの最下段の引出しを開けたところにまだ幼かった息子が乗り、ローチェストが手前に傾いて上に乗せた薄型テレビが倒れてきたことがあります。幸いケガはなかったのですが、日本製のローチェストでも事故は起こり得るのです。

「日本でも規制を」という声は分からないでもないのですが、材質や仕様や寸法が異なるチェストを一様に規制するのは困難だと私は思います。それこそ、ローチェストでも倒れる危険性があるという前提に立てば、チェストなんてもう作れないですよね。引出しを開けても全体の1/3も引き出せない仕様なら確かに安全かもしれませんが、収納の効率が悪くて仕方ありませんし、賃貸住宅に住むなら下敷きになっても死ぬことはないポリプロピレン製のチェストしか使えないということになるかもしれません。

もちろん、より安全にチェストが使えるようにメーカーが知恵を絞る余地はまだまだあると思います。地震のこともありますので引出し全段にロック機構を装着するというのもひとつの方法でしょう。一方で現状では、消費者はタンスの引出しを引き出せば重心が手前に寄って倒れる危険性があるということを肝に銘じておかなくてはならないと思います。

2017/10/22追記:

残念なことに、アメリカで8人目の犠牲者が出てしまったようです。それだけでなく、IKEAがMALMチェストのリコールを発表したにもかかわらず、返品もしくは修理されたのは全体のたった3%に過ぎず、今回の被害者宅もリコールを知らなかったということです。

そのたんすはマルムシリーズの製品で、幼児が下敷きになり死亡する事故が相次いだことから昨年、IKEAがアメリカ国内だけで2900万にものぼる製品のリコールを発表していた。昨年6月からリコールを開始したIKEAは、最初の6か月間で88万以上のたんすが返品もしくは修理されたと報告しているが、それは発表したリコール数のわずか3%に過ぎず、IKEAは「このシリーズは何十年も前から販売されているため、どれだけの家庭で使用されているかを把握するのは不可能であり、またリコールに応じずにたんすを壁に固定して使い続けている家庭もあるだろう」と述べていた。

引用:infoseek

犠牲になったお子さんやご家族を思うと心が痛みます。日本ではリコールはされていませんし、変わらず販売が継続されていますが、この事実を知らないままに買われる方もまだまだ多いのではないでしょうか。

決して「買うな!」とは言いませんが(本当は言いたい)、そういうこともあるものだと知っておいていただければと願うばかりです。

2020/02/08追記:

先日、2017年にアメリカで子供がIKEAのチェストの下敷きになって死亡した事故について和解が成立した模様です。

和解金はなんと約50億円!生産物賠償責任保険に加入していればIKEAとしてはダメージはほとんどないのかもしれませんが、同じような事故が今後起こらないように安全な商品を提供して欲しいものです。

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2021/01/25追記:

いよいよ日本でもJISで基準が示されることになりました。規制ではないものの、良心のあるメーカーなら何かしら対策を講じてくれることと思います。

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