家具新聞(2016年4月6日号)に掲載されていた木製家具2015年生産出荷統計に関する記事が興味深かったので、私なりに分析してみました。その結果、2011年から2015年までの5年間で、ダイニングセットの売上は3割近く伸びる一方、食器棚は2割減少していることが分かりました。
数字の羅列で見にくくてスイマセン。グラフ化も検討しましたが、それこそ分かりにくくなってしまうので表にまとめるのにとどめました。
このデータは経済産業省の生産動態統計をもとに家具新聞が分析し、私のほうで平均単価と2011~2015年の増減を集計したものです。元データは従業員数50人以上の事業所を対象としたもので、金額については工場出荷額であると考えられます。
この表からは以下のことが分かります。
- テーブル、食堂椅子は、販売数量、金額、単価ともに伸びている
- 応接椅子は、販売数量は減少する一方、販売金額、単価ともに伸びている
- 食器棚は販売数量、金額ともに約2割減少している
- 机は販売数量が約2割減少するも、単価は約1割アップ
- たんすは食器棚に比べて1割強の市場規模しかない
- 応接椅子は食器棚とほぼ同じ市場規模
- ダイニングセットも食器棚とほぼ同じ市場規模であると考えられる
これらを踏まえたうえで、以下は品目毎に見ていきたいと思います。
※この記事は2016年4月8日時点の情報に基づいています
たんす
まずタンス。婚礼家具を買う習慣がなくなったから家具が売れなくなったと言われて久しいですが、この5年間で見る限りは、販売数量、金額、単価ともにほぼ横ばいとなっています。家具新聞でも「堅調」と表現されています。
しかし驚いたことに、タンスの市場規模は食器棚の1/10ちょっとしかないのです。お恥ずかしながら私は全然知りませんでした。だってたとえばニトリの家具売場を見てください。タンスは食器棚に比べてそんなに売場面積が少ないでしょうか?金額ではなく数量で見たらもっと少なく、タンスは食器棚の5.6%しか市場規模がないんですよ。これが事実であれば(事実ですが)、店頭にタンスが10竿あれば、食器棚は179本ないとおかしいのです。
ともあれ、タンスって本当に売れないんですね。食器棚が100本売れている間にタンスは6竿も売れない。単価は食器棚の倍以上ありますが、それでも食器棚の販売金額の1割強ですからね。ここまでタンスが売れなくなっているものとは思いませんでした。でもぶっちゃけ、タンスなんて別に要らないと思いますよ。
食器棚
今回統計の対象となった中ではもっとも落ち込みが大きかったのが食器棚。販売数量、販売金額ともに約2割も減少しています。なお、単価は微減。
家具新聞の分析によると、「システムキッチンなどの収納に変化しているためと考えられる」ということですが、私はそれだけではないと思っています。むしろ、その影響はそんなに大きくないと思います。
私はいろんなお宅にお邪魔していますが、意外と食器棚がない家って多いんですよ。根拠を示すデータはないですが、食器棚を買わずにオープンラックなどで代用している家が多いです。それと、年配の方のお宅の台所には食器棚が2~3本あることが多い一方、若い世代になればなるほど食器棚は少ないです。というか、そもそも食器の量が桁違いに少ないです。だから食器棚を買わなくても良くなってきているんだと思います。
とは言え、食器棚って市場規模が大きいんですねー。今回統計の対象となった品目の中では、数量、金額ともに一番多いです。平均単価が低いことも考慮すると、なんだかんだ言っても単身者でも小型の食器棚を買っていることが多かったりするのではないでしょうか。
机
机は平均単価では1割近く上げているものの、数量では2割減となっています。少子化や嗜好の多様化とともに学習机が売れなくなってきたり、お父さんだけ特別に書斎を設けてもらうということが減っているんじゃないかと考えられます。
我が家でも学習机を2台置くのが精一杯で、それとは別に机を置くなんて考えられませんからねー。というか、ダイニングセットすら置いてませんし。大阪の田舎でもこんな具合ですから、都心部では机を置くなんてまったく考えられないお宅が多いのではないでしょうか。
テーブル
ここで言うテーブルとは、ダイニングテーブルやリビングテーブル、座卓も含めていると考えられます。販売数量は2割弱、金額は3割弱、単価は1割弱のアップとなっています。落ち目の家具業界においては優等生ですねー。
確かに一昔前に比べると、ダイニングテーブルもリビングテーブルも安っぽいものは減ったように感じます。具体的に言うと、ダイニング5点セットで29,800円や39,800円などというゾーンですね。
かつて私が粗大ゴミ置き場と呼んでいたニトリの店頭でもあんまりな安物は見かけなくなりました。リビングテーブルもあまりに安っぽいものはホームセンターでも売れていないように感じます。
応接椅子
応接椅子と言うとすごく古臭いですが、要はソファーですね。この5年間で単価が約15%もアップしています。
確かにニトリですらソファーの単価アップを策略し、実際にそれが功を奏しています。イケアですら同様の路線を進んでいるように見えますね。正直、いずれも見た目だけそれっぽくて、中身はちょっとどうなのという感じのものばかりですが。
食堂椅子
食堂椅子、つまりはダイニングチェアですが、テーブル同様に、販売数量は約1割、金額は3割弱、単価は1割強のアップとなっています。
私が思うに、これらリビングセットやダイニングセットを買い支えしているのは、いわゆるシニア層ではないかと思います。今まではちゃぶ台を中心に暮らしていたけれども足腰が弱くなったから椅子が良いよね、という具合で。
基本的に、この5年間の円安の影響だけを見てみても、輸入材の仕入れコストで単価は5割アップしてもおかしくないのです。為替の影響がなくても木材価格は上昇していますから、本来は単価が1割アップしても喜んでいられる状況ではありません。
でもどういうわけか、そんな状況にもかかわらず販売数量は伸びたというわけですから、やっぱり団塊世代がリフォームや引越しに際してダイニングセットを買い替えたんじゃないかなーと思うわけです。
ベッド
ベッドは販売数量は1割強の減少ながら単価は1割弱伸びて、金額では1割弱の減少となっています。つまるところはベッドもタンスと同様、ほぼ横ばいというところではないでしょうか。
ベッドはソファーと一緒で中身を誤魔化しやすい割りに単価が大きいので、家具店以外のプレイヤーも多くなっていると感じます。華やかに見えますけど、完全にレッドオーシャンですね。
今回の分析は2011年から2015年間の5年間を対象にしたため、もっと長い期間で分析した場合と比べるとまた違った結果となっている可能性もあります。しかし少なくともこの5年間で見た場合、意外と家具業界は落ちる一方という状況ではないことが確認できました。むしろこの5年間では、販売数量、金額、単価ともに、微増となっています。
もっとも、家具業界が落ち目であろうとそうでなかろうと、もっと家具を買いましょうとか、良い家具を買ってくださいとか、そんな野暮なことを言うつもりはありません。ぶっちゃけ、家具メーカーなんて今の半分くらいでも多すぎるくらいだと私は思っているくらいですから。家具メーカーも農業同様に、大規模で効率的な経営を目指したほうが良いです。
今回お伝えしたかったのは、むしろこういった品目毎の傾向です。タンスは本当に売れてないとか、食器棚はかなり減少しているけどそれでも市場規模は大きいとか、ダイニングセットやリビングセットはよく売れているとか。基本的には家具は自分にとって必要なものを選ぶべきではありますが、やっぱり世の中の流れに合わせたほうが良い面もあるわけで。長くなりましたが、そのための参考にしていただければ幸いです。
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