新居に引越してから早くも2年が経ちました。私の親も引っ越して来て二世帯同居となり、実家はもう必要ありません。というか、固定資産税の負担が馬鹿にならないので、さっさと手放してしまいたいという事情がありました。
しかし、これが一筋縄ではいきませんでした。祖父母の代から住んでいた実家は宝の山ならぬゴミの山。認知症が進む母とは言い争いが絶えず、不法占拠者を追い出すにあたっては警察沙汰にもなりました。私は4人兄弟の3番目なのですが、約740坪の敷地にある大小6棟の建物のうち5棟、しめて約150坪の床面積を短期間のうちに一人で片づけることになったのです。
約150坪=約500平米、つまり一般的な家なら5軒分の広さです。それを4ヶ月余りで片づけて得た10の教訓を披露したいと思います。
【1】自治体のゴミ収集がペースメーカー
実家のある大阪府河内長野市の場合、可燃ゴミは週2回、粗大ゴミおよび資源ゴミは月1回、プラスチック系ゴミは月2回の収集となっています。また、町内会の古紙回収が月に2回あります。
家庭ゴミの大半は可燃ゴミで、ゴミ屋敷の片づけでも同様です。また、一気に捨ててしまいたいと思っても、一般的に自宅敷地内で一時保管できるスペースは限られていますし、ゴミ集積所に一度に捨てられるのは10袋程度が限度です。そういったことを考慮すると、自治体の分別ゴミ収集のバランスは絶妙だと思います。
ほぼ毎日×2~3時間の作業でも、このゴミ収集のペースで問題ないのですから、普通の家1軒くらいなら1~2ヶ月もあれば空き家にすることができるでしょう。
なお、ゴミシールは知人から譲ってもらったりもしましたが、それでも足りなくてメルカリで買いました。安ければ8~9割引きくらいで買えます。
【2】アプリ「全国ごみの日ナビ」が助かる
私は普段からリネットのアプリ「全国ごみの日ナビ」を翌朝に出すゴミのリマインダーとして活用しています。これは今回の実家の片づけでも役立ちました。このアプリを使えば、分別ゴミの一覧表などを見なくても、瞬時に何ゴミかを知ることができるのです。
たとえば「灯油缶」は可燃ゴミ。「カーテン」は粗大ゴミ、「軍手」は可燃ゴミというのはちょっと意外でした。
【3】ジモティーやってる場合じゃない
粗大ゴミは月1回でゴミシールも買い足さないと全く足りないし、集積所に持ち込むにも限度というものがあるうえ、2階から下ろすのも大変なので、当初はジモティーでタダで引き取ってくれる人を募りました。しかし、これは本当に時間のロスが大きかったです。
スチールラックは人気がありすぎて、出品から1時間で10人以上が殺到。その中から精査して落札者を決め、ほかの方にお断りの連絡をするのに相当の時間を費やしました。また、平日の日中の引取りをお願いしていたのに土日や仕事終わりの引取りを希望してきたり、急な予定変更で振り回されることもありました。
調度品をまとめて引き取ってくれる人がいたり、気持ちの良い取引ができた方のほうが多いのは間違いないですが、忙しいときにジモティーを活用するというのはタイムパフォーマンスが悪すぎると思います。
【4】鉄くず&エアコンは引取り業者にお願い
2021年の春頃は鉄スクラップの買取価格がキロあたり20円くらいで、引き取ってくれる業者を探しても皆無でした。しかし、1年経って2022年の春はキロあたり45円くらいまで上昇したおかげで、大量にあったスチールキャビネットやスチールデスク等を引き取ってくれる業者が簡単に見つかりました。業者が丸3日掛かりで棚の中身を引っ張り出して、自分でトラックに積んで持ち帰ってくれたので、私の手間が随分と省けて助かりました。
エアコンについても同様で、7台を室内外機ともに無料で外して持ち帰ってくれました。電気屋に頼めば有料ですし、資源価格が安ければタダでは済まなかったことでしょう。ちなみに、鉄くずとエアコンの引取り業者はジモティーで探しました。
【5】街の電気屋で買えば安心なんて大ウソ
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの4品目は家電リサイクル法に基づいて、販売店には引取りの法的義務があります。しかしながら、これまで私の親が「町の電気屋で買ったほうが安心」と言って定価で買っていた電気屋は、あろうことか引き取りを拒否したのです。
まあ、カタログで大型テレビを1台売って粗利が20万円もあったら、数千円で家電の引取りなんてアホらしくてやってられないのでしょう。仕方なく、自分で軽トラをレンタルして、1時間かけて最寄りの指定引取場所へ持ち込みました。あまりに腹が立ったから、店の前で記念撮影してやりましたよ(笑)
指定引取場所へ持ち込みする前に郵便局でリサイクル料を支払う必要があるのですが、窓口でメーカーと型番をチェックして料金を確認し、伝票に何箇所も住所や名前を手書きする必要があって恐ろしく面倒でした。本当に馬鹿げた仕組みです。
【6】中身の入った瓶やスプレー缶の処分が大変
ゴミの処分でもっとも苦痛だったのは、中身の入った瓶やスプレー缶の処分です。インスタントコーヒーの瓶の中に白いドロドロした液体って、開ける前から恐ろしいじゃありませんか(苦笑)でも、液体を処分しないとゴミに出せないので、意を決してやるしかないのです。刺激臭はするし、プラ容器を手に取った途端に穴が開いて服が汚れたりするし、それが何百本とあるのですから、本当に精神的にやられます。
殺虫剤のスプレーも最近のものならコインを挟むと中身を噴出できる機能が付いていたりするのですが、ほとんどが昭和のものなので指で押し続けるほかありません。それでも古すぎてガスが抜けてしまって中身が出て来ず、最終的には大きなツルハシで穴を開けて大半を処分しました。
こういうのは次々と出てきますから、最後にまとめて処理するのがよろしいかと思います。
【7】消火器は指定引取場所へ持ち込み処分
消火器は中身を出して捨てるというわけにはいきません。消火器リサイクル推進センターのホームページで最寄りの指定引取場所を探して持ち込みました。業者によって料金は異なるものの、今回は1本あたり1,400円、砲弾型のみ500円でした。上写真右端のスプレータイプは自分で中身を排出して処分。
ちなみに、自動車用バッテリーはオートバックスなどで無償で引き取ってもらえます。リサイクル可能なので喜んで引き受けてくれるそうです。私もそうする予定でしたが、屋外に置いていたら持ち去られてしまいました。手間が省けて良かったですけどね。
【8】臨時ゴミで一気にドカンと処分
粗大ゴミの日は月に1回しかないうえに、集積所にあまり大量に持ち込むわけにもいかないので、総仕上げとして臨時ゴミの収集をお願いしました。これは危険物や土砂など引き受け不能なものを除いては分別の必要もなく、不定形でも何でもOKなので助かります。
大阪府河内長野市の場合、2トン満載で24,000円。ウチの場合は計3台分お願いしました。だいたい6畳間に並べられるくらいの量で1台分という感じですね。
【9】信頼できる不動産屋は心のオアシス
究極の実家の片づけは、実家の敷地と建物の売却です。売却にあたり、最初は財閥系のS社とM社を頼りましたが結局のところ断られました。地元の不動産屋に駆け込んでも軽くあしらわれてしまいました。傾斜地で擁壁を作り直す必要があり採算が合わないというのが最大の理由です。
もはや売却は不可能かと思っていたとき、ひょんなきっかけで声を掛けてくれたのがハイスペック堺でした。ぶっちゃけ、「財閥系でも無理なのにできるわけがない」と思っていたのですが、見事にやり切ってくれました。所有者である母親はボケているし、不法占拠者はいるし、隣地境界の立ち合いは10軒ほどあるし、境界線が曖昧なところがあちこちあるしで問題が山積みだったのですが、時に名古屋まで足を運ぶなど奔走して一つ一つ丁寧に問題を解決してくれました。
実家が賃貸業だったこともあり、不動産業界の事情はそれなりに知っているつもりでしたが、ハイスペック堺ほど親身になって骨を折ってくれる業者は知りません。孤軍奮闘する私を見かねて、天国にいる祖父母が助け舟を出してくれたに違いないと感謝しています。
【10】古い権利証より売買契約書が重要
片づけをしていると、重要そうな書類がたくさん出てきます。何を取っておくべきか、逆に何を処分して良いものかということは、クライアント宅で書類の整理を手伝っているときにもよく聞かれました。
古い土地の権利証は大事なものと思われがちですが、現在は登記識別情報というものを使うので、今となってはほとんど何の役にも立ちません。一方で、土地や建物を取得した金額の分かるもの(売買契約書や領収書)、改築や増築などのリフォームの領収書などは、不動産の売却時に取得費として控除する際に必要なのでとても重要です。
ウチの実家の場合はそういった重要書類の管理が杜撰すぎてほとんど回収できませんでした。祖父母は菓子箱にまとめて保管してくれていたのですが、父のほうは大量に書類をファイリングしている割りに肝心の書類は発見に至らずでした。
実家の片づけも、普段の片づけと本質は同じです。ウチの実家の場合は敷地が広かったので収まっているように見えましたが、普通の広さなら間違いなくゴミ屋敷になっていたと思います。「捨てる」ということを知らず、ゴミのために増築と新築を重ね、それを宝の山と信じて恩着せがましく後世にバトンタッチしようとした結果がこの有様です。
KURE556などの潤滑油が敷地内の至るところから20本以上も出てきました。軍手、養生テープ、ビニール紐、ゴミ袋なども新品のものから使い掛けのものまで大量にありました。普通の家でも使い掛けのティッシュボックスがあちこちから出てくることがよくありますが、それとまったく同じです。
書類をすべて大事に保管しているつもりでも、必要なものが見つけられなければ意味がありません。何でも取っておくというのは「善」ではなく「悪」です。モノを保管するには場所もコストも手間も掛かりますし、ほとんどのモノは時間とともに劣化していきます。ゴキブリの住み家になった書類の箱なんて新居に持って行けません。
家族で実家を片づけて和気あいあいと形見分けというお宅もあるのでしょうが、私の場合は怒りと憎しみの嵐でした。自分の子供たちにはこんな思いは絶対にさせたくないというのが、今回の実家の片づけで得た最大の教訓かと思います。
コメント