読者の皆様方の中には、最近、収納マンが家を建てるという話に触れなくなったことを不審に思われている方がいらっしゃるかもしれません。
ぶっちゃけ、色々あって一時は頓挫しかけました。ですが、紆余曲折を経て結局やっぱり建てるということになりまして、現在は契約に向けて大詰めを迎えております。
間取りも大枠では固まっています。どんな間取りにするのか決まらないと見積りが出ませんからね。
間取り図は大小含めて50回以上は書き直しました。なので、割りと自信作です。見積もりにあたってハウスメーカーに間取り図を見せたら、ほとんど手直しする必要もありませんでした。建築士が見ても問題ない仕上がりだったと言えましょう。
それでも、家を建てるなんてたぶん最初で最後ですから、間取りでは絶対に失敗したくありません。ちょうど、『ズボラでも暮らしやすい!収納上手な間取り』(タブチキヨシ:著、KADOKAWA:刊)という本が発売されたので、読んでみることにしました。
※この記事は2019年6月30日時点の情報に基づいています
ズボラでも暮らしやすい!収納上手な間取り
『ズボラでも暮らしやすい!収納上手な間取り』は自ら工務店を経営されている住宅デザイナーのタブチキヨシ氏の本です。タイトルの通り、自称・ズボラな人でも収納で悩むことがない間取りが40パターン+α紹介されています。
総じて、私としては共感するところが多かったです。収納は使うモノを使う場所に置くのが基本。これはもう収納の憲法みたいなものです。逆に言うと、中二階や小屋裏に広い収納スペースを設けましたとか、そういうバカげた実例は一切登場しません。
また、タブチ氏はモノを適当に放っておいたり趣味に興じるスペースを「ウヒヒ」と称しているのですが、これは強く共感するところでした。いわばオンオフの「オフ」のスペースで、そのスペースの多くがいわゆるママデスク(ユーティリティスペース)である点も、「女性にもデスクは必要」という私の考えにも合致するように思いました。
一方で、共感できなかったところは、間取りの多くに収納があちこちにたくさんあると感じた点です。収納スペースが複数の箇所に渡るほどモノの管理が大変になりますからね。もっとも、これは設計者の意図ではなく、施主の要望に基づくものである可能性は否定できません。
この本の良いところ
この本について、もう少し詳しく書評を書いてみたいと思います。まずは良いところから。
頭を使わずインスタ的に読める
基本的にこの本は左半分に簡単な文章、右側に間取り図、という構成が主体です。しかも文章はたった10行ほど。内容もインスタ的で、中身もライトです。インスタを見るように、頭を空にして「へーっ」と言いながら読むのに最適です。
最初の約10ページさえ読めばOK
この本は最初の約10ページにエッセンスが書き出されています。そもそもこの本は100ページちょっとですが、残りは蛇足と言っても良いほどです。最初の10ページがあるからこそ、残りのページが生きてくると思いますので、ここを読み飛ばしてしまうともったいないですね。
この本の良くないところ
この本は気軽にサラッと読めるのですが、にもかかわらず苦痛で中断してしまうところもありました。
間取り図が雑で読み取れない
私がもっともストレスを感じたのが、間取り図が書き殴ったように雑なところです。40パターンの間取り図はすべて同じような書き方で、読み取るのにすごく苦労します。
このような書き方を敢えて採用した理由は2つ考えられます。まず、正確な間取り図を書くと住宅情報誌のように堅く無味乾燥な感じになってしまうため。逆に、ラフな間取り図を示すことで、読者が取っ付きやすい感じにしたかったのだと思います。
もう一つの理由は、間取り図を正確に読み取られるのを嫌がったため。これは施主に配慮したことが第一、第二に同業者にパクられるのを防止するためと考えられます。
そういったところは理解できるものの、私としては料理のレシピ本を買ったつもりなのに材料とそれぞれの分量が示されておらず、写真から材料を読み取るような感じで、すごくストレスでした。
間取り図がほぼ完成している私としては、プロの設計者の考え方を再確認することができて良かったと思います。ただ、もし一般の方が同じ状況でこの本を読むと混乱するのではないでしょうか。著者も書いているように間取りには正解はなく、100人いれば100通りの方法があります。安易に良いと感じた部分だけを抜き出しても全体の間取りは成立しません。
なので、この本はこれからマイホームの建築をボヤッと考えている人向けだと思います。それこそ、この本を読んで「タブチさんにお願いしたい!」と思うことを狙っているのでしょう。
あと、この本で紹介されている間取りの多くが床面積100平米を超えるというところは注意が必要かもしれません。いわゆるシューズクロークなどゆったりとした間取りが実現できるのも、広い土地と予算があればこそ。ですから、限られた広さや予算で考える場合は、むしろどこを削るべきかということを考える必要があると思います。
コメント