無印良品のスチールユニットシェルフおよびステンレスユニットシェルフには2種類の転倒防止具が用意されています。「転倒防止補助フック」と「つっぱりパーツ」ですね。
今回はこれら2つの転倒防止具が地震対策に有効か否かを考えてみたいと思います。
転倒防止補助フックは地震対策としては使えないと考えたほうが良い
これら2つの転倒防止具が地震対策に使えるかというと、まず転倒防止補助フックのほうは”耐震用ではありません”と明示されており、無印良品はこれを地震対策を目的として使用することを推奨していません。
この転倒防止補助フックはネジで固定する方法と粘着テープで固定する方法が用意されています。しかし、ネジの場合は保持力が取り付け位置等に依存するところが大きく(壁下地の有無等)、粘着テープの場合は”1枚につき耐荷重約900gです”と明示されています。
普通に考えれば、ネジで固定する場合は壁の下地があるところや鴨居に取り付けるべきです。しかし、取扱説明書にはそのような記載はなく、むやみに期待を抱いて欲しくないという思いが感じられます。また粘着テープの場合は耐荷重約900gということなので、軽く引っ張れば倒れてしまう程度だということが分かります。
私としては、適切な場所にネジで固定すればそれなりに転倒防止に役立つアイテムだと思います。しかし、それでも耐荷重は10kgを保証できれば良いといったところでしょう。ほとんどの場合、シェルフにはそれ以上のモノを乗せているはずなのでとても十分とは言えませんが、これはスチールユニットシェルフの問題ではなく、家自体の問題です。メーカー側にそれを求めるのは酷だと思います。
ちなみに、粘着テープではなく旧仕様の「壁に付けられる家具」にも使われていた「かけまくり」を使う方法も考えられなくはないですが、残念ながら水平方向に引く力にはまったく役に立ちません。
つっぱりパーツも「耐震用」とは言っていない
転倒防止補助フックは”耐震用ではありません”と明示していますが、つっぱりパーツにはそのような記載はありません。ただ、”揺れや転倒を防ぎます”とは書いてあるものの、敢えて「耐震」や「地震」というフレーズは使わず、奥歯に何か挟まったような表現となっています。
しかし、これもメーカーの責任とは言えないのです。日本の住宅は一戸建てでもマンションでも吊り天井であることが一般的で、天井は梁から吊り下げられているんですね。その天井を下からつっぱりパーツで突っ張っても、天井が押し上げられるだけで地震対策には何ら有効とは言えないわけです。これは無印良品のスチールユニットシェルフ用つっぱりパーツに限った話ではなく、ほかのつっぱり式転倒防止具でもまったく同じことが言えます。
じゃあ、つっぱりパーツは耐震用としてまったく意味がないのかというと必ずしもそうではなく、天井とシェルフの間を埋めるだけでも転倒の危険性は少なからず軽減してくれるはずです。ただ、各家庭の天井の構造や強度についてメーカーが知るはずもなく、またどのような規模でどんな種類(縦揺れか横揺れかなど)の地震が来るかは想定困難なため、基本的には気休め程度に考えておくべきだと思います。
以上の通り、無印良品のスチールユニットシェルフおよびステンレスユニットシェルフの「転倒防止補助フック」と「つっぱりパーツ」は、地震対策として必ずしも万全とは言えません。ないよりはあったほうがマシ程度のものですが、それは他社商品であってもまったく同じことです。
しかし、専用の転倒防止具が用意されていることで、市販のものを使用するよりも見た目に収まりが良く、デザインをあまり損なうことがないという点では大変よろしいかと思います。気休めかもしれませんが、何もしないよりは絶対に良いですね。
ちなみに個人的には、ネジで固定できる場所であれば「転倒防止補助フック」、ネジが使えない場所では「つっぱりパーツ」をオススメしたいと思います。
コメント
収納マンさん、初めまして。
いつも大変参考にさせて頂いてます。
我が家は狭い賃貸なのもあって、家具にあまりお金をかけたくないので、独身時代から使用している錆だらけのエレクターを食器棚にしています。食器や調理器具、その他色々置けて便利です。
今回このシェルフを新しいものに買い換えたいのですが、一番の悩みは地震です。最初は突っ張りのルミナスにしようと思ってたのですが、家中ルミナスだらけで見た目にイマイチ不満です。
無印良品は普通に使用してても揺れが大きく、地震に不安があります。
天井突っ張りはあまり意味がないとありましたが、そう考えると、家具は転倒するものと諦めて家具そのものの重量を落とした方が良いのではないかと考えたりしたのですが、どう思われますか?
よしよしさま
はじめまして^^
そうですね、無印良品のユニットシェルフは普通に使っても普通に揺れますよね(苦笑)
天井突っ張り式は確かにあまり意味がありません。無いよりはマシと言うレベルですし、ほとんどが「転倒防止」であって「耐震用」とは書いておらず、耐震用と大きく書いた商品であっても小さな文字で責任回避を図っています。
もっとも、今回の熊本地震のように縦横に何度も揺れるような地震だとメーカーも及び腰になるのは致し方ないかと思います。
突っ張り式よりは壁に直接固定するほうが安全です。しかしそもそも壁の強度があまり期待できませんし、一般的には賃貸の場合は無理ですよね。
我が家も賃貸ですので、ある程度重心が低くなるようにモノを配置するようにしています。
電子レンジのような重量物は低い位置に置くなどですね。
あとそれよりも重要だと思うのは、倒れてきた場合の向きです。
家具が倒れてきたときにその前にいたらどうなるかを想定します。
出入口をふさがないことは当然のこと、就寝時など長時間そこでとどまっている可能性が高いところに置くことは控えるようにしています。
また、我が家では子供が学習机に向かっているときの背中側にオープンラックがありますが、これは倒れてきた場合に本がバラバラと落ちるので、脱出可能と考えています。
私の考え方が正しいかどうかは定かではありませんが、家具が絶対に倒れてこないようにするのは不可能なので、少しでも倒れにくくするとともに、倒れてきた場合のことを想定した配置を検討するほうが合理的ではないかと思います。
早速の回答をありがとうございます。
突っ張りは無いよりマシ程度のレベルなのですね〜。物置部屋に突っ張りのルミナスを買って安心してたので、ちょっとショックです(笑)
仰る通り、倒れる事を想定して、出来る限り安全な設置をするのが何より一番ですね。
そう考えると、家具を選ぶポイントはむしろデザインなどの方を重視しても良いのかもと思い始めました。
あるブログで震災経験者の方が、収納マンさんの書いてらっしゃるように、棚は突っ張っても倒れる事がわかったので、倒れた時のダメージが少ないようにカラーボックスを組み上げる方法を提案されていて、結構目から鱗でした。まぁキッチンにカラーボックス置くくらいなら、エレクターの方がまだマシですが。ルミナスやエレクターは安いし、棚ピッチが自由自在なのとバリエーションが多くて組みやすいのであちこちで愛用していますが、見た目がどうにもイマイチなのが悩ましいところです。
スチールラックを選ぶ際は収納マンさんの旧ブログを大変参考にさせていただきました。いつも有益な記事をありがとうございます。
よしよしさま
> あるブログで震災経験者の方が、収納マンさんの書いてらっしゃるように、棚は突っ張っても倒れる事がわかったので、倒れた時のダメージが少ないようにカラーボックスを組み上げる方法を提案されていて、結構目から鱗でした。
そうなんですか、参考になります。
カラーボックスは一般的に奥行が浅くて倒れやすいかと思いますが、倒れないようにするよりは倒れてきても大丈夫なことに重きを置くという点では私と同じ考えですね。
最近はスチールワイヤーシェルフをオシャレに使う方法の本もいくつかありますので、参考にしてみてください^^
今回いただいたご質問をもとに記事を作成しました。
明日22日公開予定です。