収納の問題
ウォークインクローゼットの間取りとして適切なものを以下の3つの選択肢から選んで答えなさい。
なお、下記の通り条件があるものとする。
- 広さはいずれも3畳
- 灰色の線はパイプハンガーを表している
- 開口部にはドアを設けないものとする
- いずれも寝室に面しているものとする
解説と答え
いずれを選択しても必ずしも不正解とは言えません。ただ、(2)については回遊スペースが広すぎるため3畳のスペースを十分に活かしきれていないと言うことができます。ウォークインクローゼットの中で着替えたい、出入り口横に整理タンスを置きたいというニーズがない限りは避けたほうが良いと言えます。
(1)についてはコーナーがデッドスペースになっていることが少し残念です。パイプハンガーの総延長は一番長くて収納量は多いと言えますが、これでは2ヶ所のコーナー部分に掛けた洋服が取り出しにくく、その下に引出式衣装ケースを置くことも難しくなります。この場合は敢えて出入口正面にパイプハンガーを設けずに、下図のように両側2面にだけパイプハンガーを設けたほうが使いやすいと言えます。
(3)については無駄な回遊スペースがなく、デッドスペースが生じていないので、特に目立った欠陥はありません。ただ、出入り口側の両側に分散したハンガーパイプがちょっと残念です。どうしても出入り口を中央に配する必要がないのであれば、下図のように出入り口を左右どちらかにずらしたほうが、洋服が分散することなく、壁1枚分の施工費も抑えることができて良いでしょう。
上図は(2)’と記していますが、これは(2)の改善策でもあります。(2)の無駄な回遊スペースを収納として活用し、デッドスペースを生じさせないようにしたのが(2)’です。
今回の問題は「開口部にはドアを設けないものとする」という前提条件が付いていましたが、実際問題としては、(1)の間取りにドアを取り付ける場合は、もう少し出入り口側の壁面が広い必要があると言えます。ドアを内開きにするならなおさらです。たった10cmのドア枠がために思うような間取りを実現できないこともあるのです。
ウォークインクローゼットの間取りを考えるときに特に気を付けるべきことは、「回遊スペース」と「デッドスペース」の2点です。(2)のように回遊スペースが広すぎるのは良くありませんが、逆に「ウォークイン」ではなく1歩踏み込むだけの「ステップイン」になってしまうのもNGです。マンションにはステップインクローゼットが非常に多いです。ステップインクローゼットを作ってしまうくらいなら、普通のクローゼットを設けたほうが何倍も良いです。「ウォークインクローゼット」という言葉に踊らされないように気を付けましょう。
デッドスペースはパイプハンガーが交差するコーナー部分を作らなければ避けることができます。礼服など普段着ることが少ない洋服を掛ければ問題ないと思われがちですが、問題はむしろその下側です。引出式衣装ケースを置くことができず、掃き溜めのようになってしまいがちです。(1)’の間取りにしてどうしても出入口正面にも洋服を掛ける場所が欲しければキャスター付きのハンガーラックを置くことでも対応可能です。もっとも、それをやったところで結局はコーナーにデッドスペースを生じさせてしまうことに気づくだけだとは思いますが。
今回のように、ウォークインクローゼットの間取りについて考えることは、普通は一生に一度あるかないかのことだと思います。しかし私が知る限り、いま世の中にあるウォークインクローゼットのほとんどは欠陥品です。工務店を信じれば間違いないどころか、工務店を信じたらほとんど間違いになってしまうのが実情です。ですから使いやすいウォークインクローゼットの間取りというものはしっかりと理解しておきましょう。
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