近所を散歩していると、新しい住宅分譲地に「収納の多い家」とか「納戸のある家」なんて書いたのぼりを見ることがよくあります。ハウスメーカーでも「大収納空間の家」や「蔵のある家」なんてキャッチコピーが使われていたりしますね。
天井高が1.4m以下であれば床面積に算入されないため、固定資産税などを低く抑えることができる場合があります。その階もしくは直下階の床面積の1/2未満である必要があるため、いくらでも広くできるわけではありません。しかしながら、条件によっては節税効果があるのでお得感を感じることができます。
収納スペースの不足を感じている人にとっては魅力的に映るのだと思いますが、収納のプロとしてはただただ苦笑いするばかりです。
納戸は広ければ良いってもんじゃない
ここに6畳の納戸があります。幅90×奥行45cmの収納家具を普通に並べればこんな感じです。出入り口付近や部屋の中央にも無理矢理並べることは可能ですが、ストレスなくモノを出し入れしようと思えばこういう置き方が妥当でしょう。
こちらは4畳の納戸です。同じく幅90×奥行45cmの収納家具を並べてみました。面積は先ほどの2/3であるにもかかわらず、出入り口の位置を変更するだけで収納家具を1本多く置くことができるのです。
いくら床面積に算入されないからと言っても、ただ広いだけの納戸は無駄が多いと言えます。固定資産税などは安く済んでも建築コストは掛かるのです。むしろ建築コストの上昇は固定資産税などの上昇に直結します。(※1)まさに「タダより高いものはない」の典型と言えるでしょう。
納戸を設ける場合は何をどのように置くのかをしっかりと考えたうえで寸法を決め、最適な出入り口の位置を検討することが大切です。
※税金については詳しくないのですが、私が調べた範囲では床面積と建物の評価額は直接連動しません。たとえば延床面積が120平米を超えるか超えないかギリギリのことろであれば、納戸が床面積に算入されるか否かで固定資産税などは変わりますが、そうでなければ関係ありません。むしろ無駄に建築コストを増やすことで固定資産税などが上がることのほうが問題です。(※2)もしこの解釈に間違いがあればご指摘ください(建ぺい率や壁量計算の問題はのぞく)。
※2訂正…基本的には納戸部分が床面積に算入されることはありません。またその場合、固定資産税には影響を及ぼしません。
使いにくい収納ならないほうがマシ
もうひとつこの手の納戸の良くないところは、一言で言うと使いにくいということです。前回の屋根裏収納と同様に高さがありませんから、かかんだ状態でモノを出し入れするのはなかなか大変です。また、それ以上に問題なのは、納戸を設ける位置です。
高さ1.4m以下の納戸を設ける場合は屋根裏のほか、中2階や半地下を利用することが多いです。つまりこれらの場所は一般的にリビングなどの居室と切り離された空間です。以前にも述べた通り、モノは使う場所に収納しなければあまり意味がありません。
中2階に納戸を設けた場合、1階からも2階からもアプローチできるので便利な面もあります。また半地下の場合で玄関に近ければ、買ってきた日用品のストックなどを帰ってすぐに放り込んでしまうこともできます。そういったメリットももちろんありますが、結局無駄にモノを溜め込んでしまうリスクが高いです。
普段使わないと言っても、ストーブや雛人形などの季節用品はそれほど多くの場所を必要としません。レジャー用品や趣味のモノなどを含めても、一般的には一間幅の押入れが1~2つ分もあれば十分と言えます。つまるところ過剰な納戸スペースは建築コストを上げるだけでなく、使いにくいために死蔵品を増やすリスクを高めるのです。
難しいことをして使いにくい納戸を設けるよりも、建坪を少なくして屋外物置を設置したほうがイニシャルコストを下げることができるだけでなく、節税効果もあると言えます(屋外用のスチール物置には固定資産税などは掛からないため)。もちろんスチール物置の場合は衣類を収納するには適しませんが、それなら普通にウォークインクローゼットを作ってしまったほうが良いと私は思います。
冒頭の4畳の納戸は以前にも紹介したウォークインクローゼットと同様の間口一間幅の形状です。これに天井高1.4m以下となる仮の天井を取り付けて、建築確認を通してからあとでリフォームして通常の天井高にするという裏ワザもあります(裏ワザと言うより違法行為ですが)。
裏ワザはともかく、ややこしいことはせずに素直に設計したほうが良いと私は思います。中2階に納戸を作れば1階から2階までの階段が長くなって毎日の上り下りが大変ですし、半地下を作れば土木工事が増えてやはり建築コストが上がります。得をしたと感じるのは早計で、一番得をするのはハウスメーカーや工務店だけではないかと私は思います。
コメント
税については誤りです。
床材、壁材等は床面積と材質で決まります。よって、税は変わります。
また建築コストの上昇は固定資産税に直結しません。
屋根裏の収納はウォークインクロゼットと比べかなり安く施工できます。安いところなら30万位。ウオークインを同じくらい大きくすれば倍近くし、固定資産税も高くなる。屋外物置のために建坪小さくすれば居住箇所部分も小さくなり本末転倒です。屋根裏に設置すれば建坪を変えずに収納スペースを確保できます。高さ1.4mなので使い勝手は良くなく、夏暑いので精密機械はきついですが、コストの面で言えば非常にメリットが高いです。
名無しさん\(^o^)/さま
はじめまして!
ご親切にいろいろ教えてくださいましてありがとうございます^^
なにぶん不勉強なもので、参考になります。
> 床材、壁材等は床面積と材質で決まります。
これはどういう意味でしょうか?
工務店によって仕様がある程度決められていることを意味しているのでしょうか?
> また建築コストの上昇は固定資産税に直結しません。
これは固定資産税が課税標準額に基づくためでしょうか?
あと、コメントいただいた後半の部分はご指摘の通りだと思います。
ただ、本文は「使いにくい収納ならないほうがマシ」というのが結論であり、使いにくくてもいかに安く収納スペースを作るかという話ではありません。
もちろん、節税効果のある屋根裏収納を支持している消費者が多いことを否定するつもりはありません。
私はただ、家は住むものというよりは資産と考え、収納のことも分かっていない工務店の言っていることを鵜呑みにしないように警鐘を鳴らしているだけです。
固定資産税の評価額は評点掛ける単位の積み重ねです。例えば、床の場合木材床の中と判断されれば、5360点でこちらに設置された面積を平米単位で掛けます。
これが140cm以下だと評価対象外です。
天井、壁、コンセントや換気扇等全て評価対象外です。
小屋裏等140cmの箇所で建設コストが上がったと言って、固定資産税と直結しないのはその為です。当然ウォークインクロゼット等の140cmを超える箇所は評価され、直結します。
名無しさん\(^o^)/さま
なるほど、そういうことですね。
ご指摘の点、ようやく理解できました。
確かにこの書き方は拙いです。
ご指摘ありがとうございました。
早速、訂正させていただきます。