「ウォークインクローゼットが使いづらい」というご相談は結構多いです。それもそのはず、私の見たところ、良いウォークインクローゼットというのはほんのわずかで、ほとんどが「なんちゃってウォークインクローゼット」だから使いにくいのは当たり前なのです。今回はこれから家を建てる人やマンションを購入しようとしている方のために「良いウォークインクローゼット」を紹介したいと思います。
現状では多くが「ステップインクローゼット」
「なんちゃってウォークインクローゼット」と言うのはちょっとあんまりなので、私は代わりに「ステップインクローゼット」と呼ぶようにしています。ウォークインクローゼットが文字通り「ウォークイン」できるのに対し、「なんちゃってウォークインクローゼット」は「ステップイン」しかできないからです。
近年の新築マンションなどでよく見るのが上図のようなステップインクローゼットです。広さは1.5畳程度が多いですね。洋服を掛けていなければ十分な広さがあるように見えますが、実際にハンガーパイプ(灰色線)に洋服を掛けると、2~3歩くらいしかステップインできません。
問題点(1)コーナー部分がデッドスペース化する
1.5畳程度のステップインクローゼットの問題点のひとつめは、コーナー部分がデッドスペース化してしまうことです。コーナー部分に洋服を掛けても取り出しにくいのですね。
もっともコーナー部分には礼服など滅多に着ない洋服を掛ければデッドスペースであっても問題ないのですが、洋服を掛けた下のスペースの使い方に困ります。フタ付きの衣装ケースを置いてそこに普段着ない衣類やタオルを収納したり、買ってきてそのままになっている衣類を紙袋に入れたまま床に置いたりすることはできますが、使いにくいことは否めません。
また、問題がデッドスペースの部分だけにとどまれば良いのですが、上図のピンク色のゾーンに置いたチェストの引出を開閉するときにコーナー周辺で干渉したり、ちょうど寸法の合う大きさのチェストを探すことが難しくなることが多くなります。
これらの問題はステップインクローゼット固有の問題というよりも上図のようにL字型にパイプハンガーを配置したことによって起こる問題ですが、ステップインクローゼットはもれなくL字型にパイプハンガーを配置しているので使いにくいわけです。
問題点(2)スペースの無駄遣い
全体の間取りとの兼ね合いでステップインクローゼットとせざるを得ないということもあるかと思いますが、マンションデベロッパーや工務店がステップインクローゼットを積極的に導入する理由は、購入を検討する人が「ウォークインクローゼットがあれば収納が多い(または使いやすい)」と思ってくれることを期待しているからだと思います。本当に収納や建築のことが分かっていればステップインクローゼットがいかにスペースの無駄であるということは知っているはずです。
上図は、前述のステップインクローゼットと一般的なクローゼットを比較したものです。ウォークインであれ、ステップインであれ、そのスペースは「通路」として使う以外に用途がありません。1.5畳程度のステップインクローゼットにした場合、上図ですとデッドスペースに目をつむっても700mm前後のパイプハンガーを多く設けることができますが、通常のクローゼットに比べれば倍以上のスペースを要していることが分かります。つまり、ステップインクローゼットにしなければ、それに面した部屋をもっと広い部屋にすることができたわけです(そして言うまでもなく、広くなった部屋にハンガーラックなどを置くことも可能)。
ステップインクローゼットにすることでハンガーパイプを多く設けることができ、通常のクローゼットの折れ戸と違って壁面には家具などを置くことができるというメリットもありますが、実際は無駄にスペースを使って使いにくい収納スペースを作っただけということが多いように思います。
以上の2つの問題点を踏まえると、私はウォークインクローゼットは良いと思いますが、ステップインクローゼットは良くないと思います。次回以降で、良いウォークインクローゼットについて紹介していきたいと思います。
コメント