例年、12月初旬には発表があるIKEA(イケア)の売上高が、2016年12月はグローバルの売上高しか発表がありませんでした。おそらく不都合があったんだろうなーと思っておりましたが、やはり日本での売上高が落ちていました。
イケア・ジャパンの16年8月期 売上高2%減
家具小売り大手イケアの日本法人、イケア・ジャパン(千葉県船橋市)の2016年8月期の売上高は前の期比2%減の767億円だった。25日付の官報に決算公告を掲載した。15年10月に国内初の小型店を熊本市に開いたが、地震で一時休業し、効果が限定的だった。ニトリなどとの競争激化も響いたとみられる。
引用:日本経済新聞(2017/1/25)
※この記事は2017年1月29日時点の情報に基づいています
店舗増加も既存店の売上減少に歯止めがかからず
2015年10月にはTouchpoint熊本がオープンしており、しかも開店当時は順調な売上推移を見せていると発表されていました。にも関わらず、日本での売上高は減少。Touchpoint熊本での売上が上積みされているはずであることから、既存店はマイナス成長であったことは間違いありません。
もっとも、Touchpoint熊本はあくまでもIKEA福岡新宮のサテライトという位置付けで、ストア面積は福岡新宮の5%程度、取扱アイテム数も20%弱程度ですから、他の店舗と比べれば10~20%程度の売上と推定されます。さらに、2016年4月14日には熊本地震が発生し、それがTouchpoint熊本の売上にマイナスの作用をもたらした可能性は否定できません。
売上減の理由は安全性への疑問と高価格?
あくまで私の憶測に過ぎませんが、日本でのIKEAの売上が減少している理由の一つは、昨年に起こった殺人チェストの一件を含めて、安全性や品質に対する不安が買い控えやイメージの悪化を招いたものと考えます。
割りと小物の家具であれば比較的すぐにリコールを呼びかけるIKEAが、MALMチェストに関しては頑なにリコールを拒否しているのはちょっと解せません。しっかり壁に固定すれば問題ないと考えているのかもしれませんが、組み立て済みのMALMチェストを大量に返品されると大損失になるという計算がはたらいているのかもしれません。
ただ、この一件に限らず、IKEAの家具の品質やアフターケアに対する日本の消費者の不満が顕在化し始めたようにも思います。これらの不安や不満は、私が思っている以上に着々と浸透してきていると感じています。
もうひとつ、日本でのIKEAの売上が減少している理由は、IKEAの家具の価格が高いと感じることが増えたためではないかと思います。安いものは驚くほど安いのですが、逆にちょっと良いかなと思ったものはIKEAの価格ではあり得ないほど高価なのです。
日本の消費者がIKEAに求めているのは、デザイン性が高くて、価格が安くて、使い捨てにしても惜しくないものです。しかし価格が高いものはデザイン性は高くても、材料がちょっと良いだけで、品質はやはり使い捨てのIKEAなのです。
そんな風に、消費者が求めているものとIKEAが売りたいと考えているものの間にギャップが生じているように思います。より簡単に言えば、価格戦略の失敗と言えるでしょう。
IKEAの停滞は今に始まったことではない?
2016年8月期(2015年9月1日~2016年8月31日)の売上高は2%減のマイナス成長となったIKEAジャパンですが、実は2015年度から既に停滞が始まっています。
2015年度(2014年9月1日~2015年8月31日)の売上高は780億8400万円で、前年同期比1.2%増(引用:流通ニュース)。2014年度には仙台ミニショップが仙台ストアに移転拡大されており、本来であればもっと売上は伸びているはずです。しかし、たったの1.2%しか増えていないということは、既存店は良くて横ばいであったと考えられます。
現在、IKEAの日本での店舗は8店舗とTouchpoint熊本という状態です。2016年度売上高が767億円ですから、1店舗あたりはざっと100億円弱と言えます。
2017年8月期の売上高もちょっと厳しそうですが、2017年10月には愛知県に長久手ストアがオープンする予定ですから、それまではなんとか現状をキープしたいところでしょう。そうでなければ、広島ストアや群馬県の前橋ストアのオープンに暗雲が立ち込めるかもしれません。
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