つい先日、Yahoo!ニュースで住宅価格が高騰していることが話題になっていました。建築資材などの高騰を踏まえて住宅の購入を検討している人は予算内に収めることに苦慮しており、住宅ローン減税延長などの国による後押しが必要だという内容です。
上記の記事では具体的にどれくらい建築資材などが高騰しているか明示されていませんが、SUUMO(スーモ)では”建築資材は2021年から2024年現在までの3年間で約30%上昇しています”と書かれています。
スーモに限らず、直近3年で2~3割程度の値上がりというデータは多く見られます。家具なども30%程度値上がりしていることが多いので、個人的にはさもありなんというところです。一方で、東京カンテイのレポートでは首都圏の新築一戸建て平均価格が下落しているという情報もあり、このまま一気に上がり続けるというわけでもなさそうです。
とは言え、住宅の取得額がアップすればローンの総額や返済期間が増えます。住宅ローンの金利が上がっていくことを想定すると、冒頭のYahoo!ニュースの記事の通り不安が大きくなっていくことは間違いないでしょう。
マンションや建売住宅、規格住宅なら、最初から取得総額が分かりやすくて、資金計画を立てやすいと思います。一方で、注文住宅の場合はどんどん夢を膨らませてしまって予算オーバーとなるケースも少なくありません。
では、どうすれば注文住宅で予算を抑えることができるのでしょうか。既に建築や不動産の専門家が指摘していることもあるかと思いますが、割りと最近に注文住宅を建てた、収納を専門とするインテリアコーディネーターの視点から、予算を抑える方法をお伝えしたいと思います。
※この記事は2024年10月21日時点の情報に基づいています
我が家が建築費を下げた方法
ローコスト&総2階建て
我が家は2020年2月に引き渡しを受けた、築4年8ヶ月の二世帯住宅です。ローコスト住宅メーカーであるアキュラホームのおかげで予算を抑えることができました。
税別、付帯工事費等別で、坪単価は約45万円。注文住宅なのに建売と変わらない安さです。大手ハウスメーカーと比べればザッと半値以下。もちろん、風呂やキッチンなど水回りはそれぞれの世帯に設けてあります。しかも、長期優良住宅のため耐震性や省エネ性で劣るようなこともないです。
賃貸住宅と間違われることもある質素な外観ですが、アキュラホームで建てたらこんな感じになっちゃうというわけではありません(苦笑)むしろアキュラホームに設計を丸投げしたら、こんな風にはならなかったでしょう。実際、近所のアキュラホームのお宅はすごくオシャレです。
こんな外観になったのは、諸々の条件を考慮して私が総2階建てにしたからです。総2階建てにすると、1階部分に屋根を設ける必要がなくコストを抑えることができます。また、外壁材の歩留まりが良くなります。おまけに、1階部分で雨漏れする可能性も減らすことができるうえ、防犯性能もアップします。
ちなみに、二世帯住宅ではない普通の一戸建てなら、ここまでのっぺりした感じにはならなかったと思います。屋根も切妻(きりつま)ではなく片流れでもっとスタイリッシュにできたはずです。屋根が大きいため、片流れにすると一方に雨水が大量に流れる可能性があり、切妻を選択せざるを得なかったというのが実情です。
設備は標準仕様を採用
水回りを中心とした住宅設備は基本的に標準グレードから外れないようにしました。指定されるメーカーとシリーズはいくつか選択肢がありますが、それ以外を選ぶとかなり割高になってしまうからです。ただし、サイズアップやグレードアップでいくらかの追加費用が掛かっているものはあります。
食洗機はビルトインしない
当初はシステムキッチンに幅60cmの食器洗い乾燥機をビルトインする予定でしたが、旧居で使っていた据え置き型を引き続き使うことにしました。これにより15万円のコスト削減です。
もっとも、食洗機に代えて普通の引出しをセットすることになるうえ、水栓を分岐式にする必要があるので、減額のインパクトはそこまで大きくはありません。しかしながら、食洗機が壊れて交換する際の費用が抑えられますし、それ以上にビルトインよりも食器を出し入れしやすいのがメリットです。洗い置きのスペースにも困らず、鍋などの収納スペースも確保しやすいので、この方法は是非おすすめしたいと思います。
各部屋クローゼットではなくWCL
アキュラホームの場合、1部屋につき1つクローゼットが付くのが標準です。対して、我が家では各部屋にクローゼットを設けず、約3畳のファミリークローゼットを設けることにしました。これにより、2世帯分で約10万円のクローゼットが6部屋分不要になり、約3万円のウォークインクローゼットが2つで済みました。60万円が6万円で済むのですから、これは効果大です。
ファミリークローゼットならコストを抑えられるだけでなく、洋服の管理が楽です。また、各部屋にクローゼットがなければ家具レイアウトの自由度が高まります。
ただし、ウォークインクローゼットなら何でも良いというわけではありません。適切な位置に適切な大きさと構造を備えたものを設ける必要があります。
窓を必要最小限に減らす
窓は小窓から掃き出し窓まで、サイズによって3~10万円以上と価格に差がありますが、平均すると1ヶ所あたり5万円程度です。我が家では21ヶ所の予定だったところ、17ヶ所まで絞り込むことで、約20万円(5万円×4ヶ所)のコストダウンができました。
最近は小窓をたくさん使うのがトレンドです。しかし、数が増えればコストが掛かるうえ、ロールスクリーンなどの設置でさらに余計な出費が増えますし、掃除がしにくくなったり、家具を置く場所に困るというデメリットが生じることもあります。
オール電化ではなく都市ガス併用
アキュラホームで最初に見積もったときは、念のためオール電化も検討しました。二世帯住宅でガスの配管が長くなるため、電気に絞ったほうが安くなるかもしれないと考えたからです。
しかし、二世帯で1台の電気給湯器では足りないことが判明。オール電化をやめたことでガスの配管を考慮しても約30万円のコストを下げることができました。1世帯あたり約15万円の削減です。
そのほか、二世帯住宅特有の事情として、電気と水道をそれぞれ1本化することで17万円のコスト削減となりました。世帯別に分けるとそれぞれに毎月の基本料金が掛かってきますから、長い目で見てもメリットがあります。
福利厚生サービスの利用で3%安く
あと、細かな努力よりも効果が大きかったのが、妻が勤めている会社で提携している福利厚生サービスの利用です。これで実に3%も安くなりました。
もっとも、同程度の値引きはハウスメーカー各社に相見積もりを掛けることで可能となるのかもしれません。逆に、福利厚生サービスなどの値引きに加えて他の値引きを併用するというのは難しいと思います。
逆に建築費が上がったところ
バルコニー拡張で約70万円
一方で、想定外の費用が避けられなかったところもあります。もっともコスト負担が大きく感じられたのはプラス7.5平米のバルコニー。約70万円のコスト増です。
標準の4平米までなら追加の必要がなかったのですが、妻が家族全員分の布団を干せる広さを希望したためこうなりました。もしこの金額に早い段階で気付いていたら、設計を見直していた可能性もあるかもしれません。
埋め込みダウンライト等で約18万円
私もインテリアコーディネーターの端くれですので、照明の重要性については理解しているつもりです。そのため、埋め込み式ダウンライトなどはケチらず、結果として約18万円のコスト増となりました。
アキュラホームでは埋め込み式ダウンライトは標準的な見積りには含めていないようです。私がこれまでに収納やインテリアの相談を受けたクライアントからも、予算内に収めるためにダウンライトを減らさざるを得なかったという話を聞くことが多かったので、それが普通なのでしょう。
ちなみに、ウォークインクローゼットやシューズクローゼット、納戸、洗面脱衣所など、お客さんの目に触れない場所は埋め込み式ダウンライトではなく、後付けの小型シーリングライトにすることでコストを抑えました。このようにメリハリをつけることは必要だと思います。
階段下収納で約6万円
これは想定外でも何でもありませんが、階段下収納には約6万円のコストが掛かっています。ハンガーパイプと枕棚を設けたクローゼットひとつで約10万円なので妥当なところでしょう。
この階段下収納は雛人形や五月人形などの季節用品のほか、ペットボトル飲料などのストックの収納に活用しており、我が家にとっては必須です。しかしながら、デッドスペースを活用できるとは言え、収納を設けるにはコストが掛かります。用途を想定することなく収納を増やすとコスト増に繋がるので、無闇に増やさないように気を付けましょう。
以上の通り、どうしても避けられなかったコスト増もあったわけですが、トータルで5%以上のコスト削減を果たすことができました。当初から総2階建てで見積金額を抑えていたことも含めて考えると、我ながらかなり頑張ったほうだと自負しています。さすがのアキュラホームでも標準的な坪単価は50万円から80万円と言われていますからね。45万円というのはそれ以下です。
一方で、現在は建築コストが3割ほどアップしていると言われていますから、知恵を捻ったところでそれをすべてカバーするのは困難です。「一生で一度きりの大きな買い物だから」とか言い出すと、とてもじゃありませんが予算内に抑えるのは無理だと思います。
私は家はただの箱で良いと思うのです。共働きが一般的となった現在、家に帰ってもご飯を食べて風呂に入って寝るだけ。部屋ではスマホやパソコンを見て過ごす時間が多く、家の外側はもちろん、家の中もほとんど目に入りません。
それなら家にお金を掛けず、家具に予算を割いたほうが効果的だと思います。逆に、家に予算を使い果たして、ショボい家具しか買えなくなってしまうのはとても残念に思います。
もっとも、お金の使い方は人それぞれです。今回の我が家が価格を抑えた方法と逆にコストアップに繋がったところが、これから家を建てる方のお役に立てば幸いです。
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