前回まで3回に渡って、粘着式耐震ストッパーの売れ筋3商品(サンワサプライ「耐震ストッパーT型 QL-59」、北川工業「スーパータックフィット TF-M」、サンワサプライ「耐震ストッパー QL-78」(現行品は「QL-78N」))の検証をしてきました。
その結果分かったことは、いずれも大変素晴らしい商品だということです。地震大国・日本のメーカーが「震度7にも耐える」とハッキリ明示しているだけのことはあると感じました。
一方で、これら3商品は一言で言えば「粘着式耐震ストッパー」ですが、実際に使ってみるとそれぞれ設計思想が根本的に異なることが分かりました。
※この記事は2017年4月10日時点の情報に基づいています(2024年1月11日一部更新)
それぞれ設計思想が異なる
サンワサプライ・耐震ストッパー QL-78
サンワサプライの「耐震ストッパー QL-78」は、分厚いスポンジを使うことで大幅に地震の揺れを逃がすことができる免震構造であると言えます。また、接着力は弱いですが、広い面全体で支えるようになっています。
北川工業・スーパータックフィット TF-M
北川工業の「スーパータックフィット TF-M」は、粘着ゲルを使うことである程度の揺れを逃がす中程度の免震構造であると言えます。また、3商品の中では相対的に中程度の接着力と中程度の面積で支える仕組みになっています。
サンワサプライ・耐震ストッパーT型 QL-59
サンワサプライの「耐震ストッパーT型 QL-59」は、強力な両面テープを使うことで文字通り地震に耐える構造であると言えます。また、狭い接着面で4ヶ所に力を分散する仕組みになっています。
ニーズに合わせて選ぶべし
あくまで個人的な見解ではありますが、賃貸住宅に住んでいる私としては、できれば壁紙を傷めないことが望ましいです。その点で言うと、サンワサプライの「耐震ストッパー QL-78」はもっとも剥がしやすく、壁紙を傷めるリスクが少ないように思います。ただし、設置にあたって家具を動かす必要があるのはやはり面倒です。
その点、北川工業の「スーパータックフィット TF-M」なら家具を動かす必要がなく、容易に設置可能です。また、地震に耐える構造よりも粘着ゲルで揺れを逃がすほうが現実的かと思います。一方で、粘着ゲルが壁紙に与える影響はおそらく数年使ってみないことには判断しにくいと思うところでもあります。
サンワサプライの「耐震ストッパーT型 QL-59」は強力な両面テープを使うため、数年後にキレイに剥がせるかどうかは少し不安があります。ただ、壁紙と家族の命のどちらが大事かと考えれば、それは取るに足らないことだとも思います。また、2ヶ所よりも4ヶ所で支えたほうが力を分散しやすく、長いベルトを使用することである程度免震できる構造であることも魅力に感じます。
以上のようにそれぞれにメリットがあるわけですが、実際に地震が起きたときにどのような結果が待っているかは、地震の程度や設置状況により一概には言えないでしょう。そう考えると、目下重要なのは取付けのしやすさや壁紙への負担というところではないでしょうか。
壁紙への負担を心配するのなら、サンワサプライの「耐震ストッパー QL-78」がオススメと言えるかと思います。また、壁紙への負担をそれなりに心配し、取付けやすさも考慮するなら北川工業の「スーパータックフィット TF-M」が良いと思います。取付けやすさだけでなく、家具を動かす可能性が見込まれる場合はサンワサプライの「耐震ストッパーT型 QL-59」がもっとも適しているのではないでしょうか。
今回、3つの商品を試しながら改めて思ったことは、先ほど少し触れたように「壁紙と家族の命のどちらが大事か?」ということです。できるだけ壁紙は傷つけたくないという気持ちに変わりはありませんが、大地震が起こった後の状況をイメージすれば壁紙どころの話ではないわけですよね。壁紙が破れても家族の身が安全であればOKですし、大地震が起こる前に家具の移動の必要が生じて、耐震ストッパーを剥がすときに壁紙が破れたとしても、それは大きな問題ではないと思うようになりました。
そもそも、鴨居や間柱が付けられた和室を旨とする住宅を前提とした賃貸契約は、塩ビクロス貼りの石膏ボード壁を標準とする現代の住宅にそぐわないと思います。数年も住めば塩ビクロスはところどころが汚損することは当然で、それを張り替えるのは貸主の義務ではないかと思います。また、地震に対する世間の認識や対策の方法は一昔前とは変わっており、旧態依然とした契約書類で処理することに無理があると感じます。
借地借家法は借家人に優位にできすぎているという批判もありますが、地震対策の面で言えばまだまだ借家人に不利な状況だと私は思います。現状では、借家人は背の高い家具を置くな、もしくは地震が起きたら家具の下敷きになって死ねと言っているようなもんですからね。そういう状況を改善するためには、政府が何かしらのガイドラインを設けるべきではないでしょうか。
…と、話が変な方向に行ってしまいましたが(苦笑)、とどのつまり、壁紙を損傷するリスクはそれほど大きく考える必要はなく、壁紙が損傷したらあとは管理会社としっかり議論すれば良いとして、家族の命と取付けやすさにウエイトを置いて粘着式耐震ストッパーを選ぶのが一番良いのではないかという結論に至った次第です。
この度の私の検証が何かしら皆様のお役に立てば幸いです。
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