前回は、生活動線をスムーズにするためのダイニングセットの選び方について紹介しました。テーブルのサイズ、脚形状、レイアウトなどについてですね。
前回紹介したところをしっかりとチェックしていただければダイニングセット選びはほぼ完璧だと思いますが、今回は補足として素材などのスペックについて紹介したいと思います。
テーブルの素材は無垢か突板
最近の木質系ダイニングテーブルの素材は主に「無垢(むく)」か「突板(つきいた)」かのどちらかです。無垢という呼び方は必ずしも正確ではなくて、正確に言うなら集成材ですけれども、角材を板状に並べて接着したものです。一般的に無垢のほうが高級で、ボリューム感があり、丸みを帯びた自由なデザインが可能です。一方で割れ、反り、波打ちといった欠陥を生じる場合があります。そういった欠陥を未然に防ぐことが非常に重要で、そのためには製材工程でじっくりと時間と手間を掛ける必要があるのですが、安物の場合はそこで手抜きをしています。
突板というのは木を薄くスライスして合板に貼ったもののことです。最近は輸入木材の価格が高騰していることもあって、無垢よりも突板のテーブルのほうが増えている印象です。突板の加工技術は向上しており、私でも無垢と見分けがつかないほどのこともあります。また最近は直線的でシンプルなデザインが好まれる傾向があるため、一般的に丸みのあるデザインを表現しにくい突板でも問題ないという側面もあるようです。メリットは無垢に比べて安価であること。デメリットは、テーブルの芯材が浮いて見える場合があることが以前は挙げられましたが、最近はそういうものを見ることはありません。
なお、無垢や突板以外の木質系テーブルとしては、MDF合板に直接塗装したもの(主にホワイトべた塗りのテーブルなど)や、いわゆるデコラ貼り(メラミン合板貼り)のものがありますが、最近はほとんど見ることはありません。
木材の主流はオーク、ナラ、タモ、ウォールナットなど
無垢でも突板でも、使われる木材はオーク、ナラ、タモ、ウォールナット(くるみ)が最近は多いです。他に、ビーチ(ブナ)、バーチ(カバ)、チェリー(桜)など。基本的にこれらは硬い木材なのでダイニングテーブルとして適していると言えます。
最近はほとんど流行りませんが、パイン(松)は軟らかいうえに無垢は割れたり反ったりもしやすいのでオススメしません。また、ラバーウッド(ゴムの木)もあまり硬いとは言えないうえに木目がなく美しくないのでオススメとは言い難いです。
なお、ダイニングセットの場合、ほとんどはテーブルと椅子で木材の種類が同じです。ですから色味や質感は基本的に合っているはずなのですが、別の工場で作っている場合や、テーブルが突板の場合は、木目や色味が微妙に違っているように見える場合があります。
主流の塗装方法はウレタン塗装
無垢でも突板でも現在の家具の塗装の主流はウレタン塗装です。むかし主流だったラッカー塗装に比べ、塗膜が劣化することなく安定していることが特徴です。
最近はシリコン樹脂塗装や、ファインセラミックスを混合したセラウッド塗装などの、汚れや熱に強い塗装を使ったテーブルもちらほら見かけます。機能性重視の方はそういった高機能塗装を施したテーブルを探してみるのも良いでしょう。
ほか、オイル仕上げのものもあります。ある程度、水気や汚れを防ぐのには役立ちますが、ウレタン塗装の比べればキズや汚れに弱いので機能的とは言えません。木の質感を感じることができて玄人好みだとは思いますが、ダイニングテーブルとしてはどうかと個人的には思います。
椅子は背張りのものは避けたほうが無難
椅子については生活動線への影響を考慮したうえで基本的にはデザインの好みと座り心地で選んでいただければ良いと思うのですが、一点、強いて言うならば背張りタイプは避けたほうが無難だということです。
背張りとは上商品写真のように、背もたれに布や皮革、籐などを張ったもののことです。もちろん背張りのものはデザインや座り心地の面で良いのですが、張り替えるとなった場合に高くつくのです。通常、座面だけなら5,000円から10,000円くらいで張り替え可能です。しかし背張りのものを張り替えるとなると、椅子1脚を新しく買うよりも高くなってしまいます。使い捨てと割り切れる程度のものであれば良いですが、良いものを長く使いたいと思う場合は背張りはオススメしません。
最近は流行らない回転式チェア
10数年前は回転式のチェアが人気でした。今はほとんど流行らないのですが、私もあまりオススメしません。特に安物は回転部にベアリングではなく樹脂版を使っているものが多くて壊れやすいです。また、ベアリングを使っているものもその性能はピンキリです。回転チェアはどうしても重くなってしまうこともあり、避けたほうが無難と言えるでしょう。
ほか、同じく最近は流行らないものにキャスター付きのチェアがあります。これもやはり壊れやすいので、避けたほうが良いでしょう。
回転チェアやキャスター付きチェアよりもオススメなのが、座面に布バネを使った椅子です。通常、ダイニングチェアの座面は合板の上にウレタンを敷き、それを布や皮革で巻くのが一般的ですが、布バネの場合は合板をほとんど使わないので椅子を軽くすることができます。また、布バネを使うと軽いだけでなく、座り心地も良いです。ただし布バネを使うと一般的に座面の幅が広くなり、値段も高くなってしまいます。
以上、割りと細かいところまでダイニングセットの選び方について紹介しました。でもそんなにシビアに考える必要はありません。一番手っ取り早いのは、家具店を3~4店舗回って、そこでの売れ筋やオススメ品を聞いてみることです。ただしお店にとって都合の良いことばかり言うところもあるので、100%真に受けてもいけません。だからこそ3~4店舗は見て回ったほうが良いのです。
インテリアは時間の貯金です。じっくり時間を掛けて納得するまで選んで手に入れ、ゆっくりとした時間を楽しみましょう。
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