前回の話に関連して、今回は少し別の角度から、家の間取りを設計する際にクローゼットや押入れを増やしてはいけない理由を改めて説明したいと思います。
クローゼットや押入れは本来使いにくいもの
まず気付いてもらわないといけないことは、クローゼットや押入れなどの造り付けの収納スペースは本来使いにくいものだということです。これらの収納スペースが使いやすいという人はほとんどいないのではないでしょうか。
その理由は後述するとして、改めて考えれば使いにくいはずのクローゼットや押入れを増やせば、片づけが難しくなるのは当然のことです。しかし、片づかないのは収納の数が足りないからだと勘違いしてしまうために、数を追い求めてしまうという現実があります。
収納の基本は「使うモノを使う場所に」
使いたいモノが使いたい場所にあったら、片づけは楽になると思いませんか?たとえばリビングでハサミを使いたいと思ったときに、手近にチェストがあればそこに収納することで出し入れが楽になります。しかし、そこに収納スペースがないと、別の場所からハサミを取ってくることになります。
では質問です。リビングに押入れがあったら、片づけやすくなるでしょうか?ならないですよね。クローゼットでも同様です。ハサミという小物に対して押入れやクローゼットは大きすぎるのです。
この場合、リビングに必要なのは押入れやクローゼットなのではなくチェストなのです。もっと言えば、チェストを置く場所なのです。クローゼットをギーガシャっと開けたところにチェストがあっても出し入れが面倒なのです。
収納は「使うモノを使う場所に」が基本ですが、そこに造り付けの収納スペースがあれば良いという意味ではありません。使いたいモノそれぞれに最適な収納の仕方を考える必要があるのです。
クローゼットや押入れが小物の収納に向かない理由
クローゼットや押入れなどの造り付けの収納スペースが使いにくい理由は、小物の収納に向いていないからです。それはそうです。クローゼットは洋服を掛ける場所、押入れは布団を収納する場所ですから、そこにハサミのような小物を収納しようと思うと工夫が必要になります。
クローゼットや押入れは小物の収納に向かない理由は、3つのことが挙げられます。
- 奥行が深い
- 棚が動かせない
- 扉が大きい
1. 奥行が深い
クローゼットの奥行は通常約60cm、押入れは約80cm前後です。それらは洋服を掛けたり布団を収納するにはちょうど良い奥行ですが、ハサミのような小物に対しては深すぎます。家の中のモノのほとんどは奥行が30cm以下なので、そもそもクローゼットや押入れとは相性が悪いのです。
2. 棚が動かせない
また、最近のクローゼットは棚板の位置を動かせるものもありますが、現状ほとんどはそうなっていません。押入れはまず間違いなく棚は固定ですよね。いずれも棚が1段もないというケースすらあります。
家の中にあるモノは大きさがマチマチであるため、棚板の高さを自由に変えられたほうが効率良く収納できます。しかしクローゼットや押入れはそうなっていないので使いにくいのです。
3. 扉が大きい
布団を出し入れする際に押入れの襖を開け閉めすることには合理的な理由があると言えます。大きなモノを出し入れするには大きな襖を開けなければならないことは当然と言えるからです。
しかし、ハサミを出し入れするのに大きな襖を開け閉めすることは合理的と言えるでしょうか?また、押入れの襖を開けて、その先にあるレターケースの引出しを開けてハサミを出すというのは面倒ではないでしょうか?
もちろん、諸々の小物を大きな襖で隠してしまうことでスッキリと見せることができると言うことはできます。しかし、それはとても簡単なようで、実際には心理的な障壁があるのです。前述の通り、その行動は合理的とは言えないからです。
家の間取りを設計する際にクローゼットや押入れを増やしてはいけない理由がお分かりいただけたでしょうか?つまるところ家の中で収納に困るモノのほとんどは小物であり、それを収めるにはクローゼットや押入れは適さないのです。
前回説明した通り、造り付けの収納スペースはコストが掛かる上に動かすことができません。見た目や耐震性の面ではメリットはあると言えますが、本気で片づけたいと思ったらクローゼットや押入れの数は増やすべきではないのです。
クローゼットは洋服を掛ける場所、押入れは布団を収納する場所。あとは普段使わない季節用品などを収める場所として確保すれば十分なのです。クローゼットや押入れを作るには10万円、20万円は軽く掛かるわけですから、無駄で使いにくものを作らずに収納家具を置いたほうが良いのです。
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