先月(2020年1月)、子供がIKEAのMALM(マルム)チェストの下敷きになって死亡した事故に関する記事へのアクセスが急増しました。何があったのかと思ったら、和解が成立して約50億円が支払われることになったという報道があったのですね。
ただ、普段から様々なニュースをウォッチしている私も気付かなかったほど、この件は大きく報道されることはありませんでした。IKEAジャパンの売上についても、好調だった頃は話題に上がることが多かったものの、最近はまったくニュースとして取り上げられません。一体どうなっているのでしょうか。
※この記事は2020年2月10日時点の情報に基づいています
イケアジャパン、売上微増も営業損失8.5億円
2019年8月期 | 2018年8月期 | |
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売上高 | 844億7600万円 | 840億9100万円 |
営業損失 | 8億5900万円 | 9億6200万円 |
経常損失 | 5億9200万円 | 8億2400万円 |
当期損失 | 8億8500万円 | 30億3400万円 |
家具業界紙の『ホームリビング』が報じたところによると、イケアジャパンの2019年8月期の業績は上表の通りとなりました。前期比で売上は約0.5%の微増、利益は前期よりはマシにはなったものの引き続き大きな損失が生じています。
直近6年間の業績推移
もう少し遡って見てみましょう。2016年8月期まではIKEAも日本で利益を出せていたのですが、この3年は大きな損失を出しています。
売上減は2017年8月期に底を打ち、前期は長久手ストア開業の売上が貢献してその分が丸々売上に上乗せされ、2019年8月期は新規出店がなかったものの何とか前年並みをキープした格好です。
広島、前橋は宙吊りのまま、渋谷と原宿に小型店
イケアジャパンは以前に広島ストアと前橋ストアの出店を表明していましたが、現在はこれらの計画が宙に浮いてしまっている状態です。一方で、新規出店の予定がないわけではありません。2018年には2020年春に原宿駅前に小型店を出店することを明らかにしています。また、それが具体的に明らかにされる前に、先日は2020年2月20日に法人向け業態の「IKEA for Business」を渋谷に開設することを発表しました。
従来は大型店を郊外にオープンすることで売上を伸ばしてきたIKEAですが、それが行き詰まりを見せてきたことで都市部に小型店を出店する戦略に切り替えようとしているようです。海外でも同様の流れとなっているようですし、日本でもニトリが都心部に出店して成功していることもIKEAの小型店戦略を後押ししていると考えられます。
シニアの支持を得ない限りIKEAは厳しい
ただ、個人的にはIKEAが都心に小型店を出したところで、厳しいことには変わりないと思います。小型店は大型店に比べて投資が少なくて済みますが、同時に得られる売上も少ないです。また、店舗在庫が少なくてもオンラインショップに誘導すれば売上を作れると見る向きもあるものの、IKEAのオンライン戦略はまだ十分とは言えません。実際のところ、IKEAのホームページのアクセス数はここ数年で減少しているというデータもあります。
日本のホームファッション業界で圧倒的強者となっているニトリはシニア層からも絶大な支持を得ています。少子高齢化が進む日本ではシニア層の支持を得なければ成長できません。実際に、私の身の回りのシニア層からもニトリを支持する声はよく聞かれます。
一方でIKEAはというと、冒頭で述べたMALMチェスト然り、安全対策が不十分です。シニアにとっては郊外の大型店で家具を買ってマイカーに積み込んで自分で組み立てるのは大変でしょうし、わざわざ都心に出るのも、オンラインショップで発注するのも、何かと心理的障壁が高いと思います。それならニトリのほうがいくらも安心で利便性も高いことでしょう。
よって、IKEAが今後も日本で売上を伸ばしたいなら、シニアや私のように保守的な層に振り向いてもらうことがまず必要だと思います。口先で「安心安全」を連呼するだけではダメです。
なお、3期連続で赤字となっているイケアジャパンは、利益剰余金もマイナス47億300万円となり、財務状況もかなり厳しいと考えられます。しかしながら、粗利率は38%ほどありますから、売上が思うように伸びなくても販売管理費を下げるなどすることでまだまだ挽回の余地はあるはずです。
ニトリの粗利率が50%をゆうに超えることを考えるとIKEAのビジネスモデルは厳しいものがありますが、とにかくまあ頑張ってもらいたいものですねー。
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