システムキッチンの吊戸棚が使いにくい、もっと活用できるようにしたい、といったご相談は少なくありません。
キッチンの限られたスペースに置きたいモノはたくさんあります。一方で、手が届きにくい吊戸棚は使い勝手が悪いと感じられることが多いのだと思います。
そこでよく言われるのが、「吊戸棚からゴンドラをガシャンッと下ろして中のモノに手が届きやすいようにしたい」という要望です。
いわゆる「どんでん収納」のことですが、これが実は使い勝手がよろしくありません。今回はどんでん収納のデメリットと、それに代わる収納方法についてお話ししたいと思います。
どんでん収納とは
どんでん収納とは、上写真のようなもののことです。後付けの市販品ではオークスの「スイングダウンウォール」およびその後継モデルの「ダウンキャビネット」(上写真)がメジャーです。
ほか、同様のものはシステムキッチンメーカー各社でオプションとして用意されており、それぞれ下記の通り名称が異なります。手動ではなく電動で昇降するタイプもありますが、その場合は吊戸棚そのものを交換する必要があります。
メーカー | 名称 |
---|---|
リクシル | ダウンウォールキャビネット |
タカラスタンダード | 吊戸用昇降棚 |
クリナップ | ムーブダウン吊戸棚 |
パナソニック | ソフトダウンウォールユニット |
どんでん収納のメリット&デメリット
- 吊戸棚の中のモノに手が届きやすくなる
どんでん収納を採用するメリットは吊戸棚の中のモノに手が届きやすくなるということです。しかし、実はそれ以外にメリットがありません。
- モノの出し入れに手間がかかる
- 収納量が大幅に減る
- 収納スペースの奥行が短くなる
- 費用が掛かる
一方で、デメリットは多いです。まず、モノをひとつ出し入れするだけでもすごく手間が掛かります。両扉を開け、ゴンドラを下ろし、モノを手に取ってゴンドラを戻し、両扉を閉めるという、最低でも4つのアクションが必要です。普通の吊戸棚の下段なら片手で扉を開けて、モノを手に取ったら扉を閉めるだけで済むところが、大幅に手間が増えることになります。
また、ゴンドラは元の吊戸棚の容量に対して一回りも二回りも小さくなります。さらに、もともと浅めの奥行がさらに浅くなり、それまで収まっていたモノが収まらなくなります。
もちろん、費用も掛かります。オークスの幅90cm用のダウンキャビネットで約2.5万円からです。収納グッズとしてはかなり割高なほうだと思います。それだけ投資しても使いやすくなるなら良いですけど、手間は増えるわ、収納量は減るわでは、踏んだり蹴ったりではないでしょうか。
どんでん収納よりも踏み台の活用を
そんなわけで、どんでん収納を採り入れたいというご相談を受けたら、私はまず踏み台を使うことをオススメするようにしています。
上写真のトレードワン「セノ・ビー」なら、片づける際にハンドルを持ち上げるだけで畳めるので楽です。また、畳むと厚みが45mmになるので、食器棚などのすき間にも収まります。おまけに、価格も安いです。どんでん収納の1/10以下で済みます。
吊戸棚ストッカーの使用もオススメ
乾物や水筒、弁当箱、密閉容器といった小物を吊戸棚に収納する場合は、不動技研の「吊り戸棚ボックス」などを使うことで出し入れしやすくすることもできます。
不動技研の吊り戸棚ボックスはハンドルがボックスの下部に付いているため、てこの原理で下から支えやすいです。また、ボックスの奥側上部がカットされているので、上写真のように傾けて出し入れしやすいのもメリットと言えます。
吊戸棚を使いやすくしたいなら、どんでん収納よりも踏み台や吊戸棚ストッカーを活用したほうが良いということはご理解いただけたでしょうか。
便利そうなものを目にすると、ついついそれが欲しくなってしまう気持ちは分かります。しかし、現実はそんなに甘くありません。最初から電動タイプの昇降棚を取り付けていれば収納量は減ることがなく、ワンタッチで手間もありませんが、ゆっくり昇降するので「自分で扉を開けて取ったほうが早い!」となることも多いです。
吊戸棚は手だけでなく目も届きにくいため、食品を収納するには向きません。また、重いモノや割れものもNGです。しかし、キッチンは普段よく使うモノばかりではありません。ほとんど使わないけれども必要なモノのほうがむしろ多いはずです。密閉容器、製菓道具、重箱などですね。
まだ手が届く下段にはそれなりによく使うモノを、上段にはほとんど使わないモノを収納し、踏み台を持ってきて出し入れするようにしてもらえば、そんなに不便を感じることはないと思います。くれぐれもどんでん収納の採用は踏みとどまってください。
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