広い子供部屋を用意しておいて幼少期は広々としたスペースで遊ばせ、子供たちが成長したら間仕切ってそれぞれのプライベートを確保できるようにするという間取りは、分譲住宅でも注文住宅でも少なくありません。実際、私もそういったお部屋のリフォームや模様替えに立ち会ったことが何度もあります。
ただ、相談者がプロの知恵を借りたいと思うのも納得するほど、非常に難しい状況であることがほとんどです。9畳あるけど窓やドアが邪魔をして4畳と5畳にしかならないとか、キレイに4畳半ずつ分けられても壁4面のうち一面は掃き出し窓、一面はクローゼット、一面はドアがあって、どうやって机とベッドを置くのかという状況など。ひどい場合はスイッチプレートや天井照明を移設しないと壁を作れないなんてこともありました。
そもそも、将来的に間仕切るかもしれないと考えて広い子供部屋を作る方は、子供が独立したら間仕切り壁を撤去するかもしれないとか、いざリフォームしようとすると躊躇してしまうとか、そういうケースも多々あるんですよね。
なので、広い子供部屋を将来的に間仕切って2部屋にするプランはなかなか難しいと、かねてから感じておりました。しかし、このたびそのことがアキュラホームと日本女子大学による共同研究でも明らかになった模様です。
“大部屋を2つに仕切る“計画を実施したのは2割以下
2011年または2016年にアキュラホームで家を建てた1,716組の居住者を対象に、住宅内の空間の使い方、およびコロナ禍の暮らしの変化について日本女子大学と共同で調査したところ、入居者のライフステージによる利用形態の変化とウィズコロナ時代に必要とされる住空間の機能について、いくつかのことが分かりました。その結果のひとつが、“大きい部屋を2つに仕切る“という計画を実施した家庭が2割以下にとどまったということです。
上図の通り、”将来的に一部屋を複数の部屋に分けられるようにした”お宅のうち、5年後もしくは10年後時点で”壁で分割”したのは約15%ということで、この数字を以って共同研究では”2割以下”と表現していると考えられます。
ちなみに、”壁と家具で分割”は約1%、”家具で分割”は約12%となっており、これらを含めても7割以上は部屋を分割していないと言えるでしょう。
ただし、2011年に家を建てたときに0歳だった子供は10年後にはまだ小学生です。”部屋の分割を実施した方の傾向をみると、2011年に建築した方は子どもが中学生に上がる前後で実施している傾向が見られる”との結果も得られていることから、2026年に同様の調査をすれば部屋を間仕切る家の割合はもっと多くなると考えられます。
また、家を建ててから5年~10年の間にリフォームをすることを考える人は実際のところ少ないと思います。しかしながら、子供が中高生になる頃には何かと忙しかったり、色々と物入りでリフォームどころでは無かったりと、結局リフォームに踏み切れないことも多く、広い子供部屋を間仕切るという当初のプランを実行に移すお宅は多く見積もっても半分に満たないのではないかと思います。
アキュラホームにとっては不都合な現実
当社が積極的に提案しているスケルトンインフィルについては、子どもの成長に合わせて部屋を仕切るという計画を新築当初に22%の家庭が採用しており、それを実施した人が内2割以下であることから、予算、難易度、時間などがお客様にとっては不透明で、ハードルが高いこともわかりました。
出典:アキュラホーム
アキュラホームでは家は建てて終わりではなく、ライフスタイルの変化に合わせて家もかたちを変えていくことを理想と考えています。
スケルトンインフィルであれば変化に対応しやすいことは言うまでもありません。壁1枚を作るくらいなら数十万円で済むのですから簡単なことのはずですが、実際問題として住人にとっては敷居が高いというのが現実なのでしょう。
もちろん、私としてはアキュラホームの考え方に賛成です。また、アキュラホームなら冒頭で述べたような設計上の不備はないでしょう。なので、今回の結果を踏まえて、アキュラホームとしては設計時にあらかじめ間仕切り壁を作った場合にどれくらい費用と時間が掛かるか、壁を作ったら家具をどうレイアウトするか、そこまでシッカリと説明しておく必要があるのだと思います。
以上の通り、広い子供部屋を将来的に間仕切って使うという間取りを採用しても5~10年後にリフォームを実行に移すお宅は2割にも満たないという現実があります。家具で間仕切るというお宅を含めても3割以下です。
しかし、だからと言ってその間取りが悪いというわけではありません。各ご家庭によってライフスタイルなどは様々なのですから、子供の様子を見た結果リフォームする必要はないと判断したケースもあるでしょうし、この調査をきっかけにリフォームに踏み切るお宅もあるでしょう。
一方で、間仕切り壁を作るにあたってその知見がないユーザーが多いのも現実です。また、冒頭でもお伝えした通り、私でも「どうやって間仕切るの?」と首を傾げるような設計になっているケースも少なくないと思います。
ですので、こういった間取りを採用する場合は、リフォーム費用やその後の家具レイアウトなどをあらかじめ吟味しておく必要があるとともに、ハウスメーカーにも説明責任があると言えるのではないでしょうか。
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